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「幻夢鳥の寝言で育てた花の香りのフレグランスランプ! 灯して寝るたびに面白おかしくランダムに夢が見れるってわけ」 「なんと、それは素敵だね……!」 「クシシ、あ〜げるっ! メリクリ〜!」 「ズーズィ、ありがとうなのだよ」  ニューイを驚かせて機嫌のいいズーズィは、包装もなにもしていないクリスマスプレゼントを贈ってニヒ、と笑った。  ニューイは慣れているようで、嬉しげにニヘラと頬を弛めて喜んだ。  それからポケットに手を突っ込み、中から一抱えの箱を取り出す。  どうやって入っていたのか謎な大きさだが、ツッコミは入れない。 「私からもクリスマスプレゼントだ」 「中身によっては受け取ってあげる〜」 「中身かい? ええと今年は、死んでも一緒! が売り文句の呪いのテディベア、デッド・チャッキーくんさ。デーモンムー、じゃなくてデモスタグラムでばえる……らしいのだよ!」 「プププ! アホドジマヌケアンポンタン悪魔ニュっちにしてはナイスチョイス!」 「メリークリスマス、ズーズィ」  ズーズィは綺麗にラッピングされた箱を受け取り、不思議なポケットにしまった。  そしてそのまま見守っていた九蔵たちの前に来て、ニヤニヤと笑いつつベシッ! と澄央の胸に手を押し付ける。 「ナッスんには〝大食漢の秘密〟。これ飲むとどんだけ食べてもお腹痛くならない。明日にはキレイさっぱり消化して胃もたれもしねーの!」 「マ? 愛してるズーズィ」 「ウヒヒッ! ケツ洗って待ってニャ!」  ご機嫌ズーズィ。  突然のクリスマスプレゼントに、澄央は瞬速で貞操を捧げていた。  更にズーズィはそれを見ていた九蔵にニマァ〜! と笑みを見せ、バシッ! と同じく手を押し付ける。 「っ俺?」 「クーにゃんには〝娼婦のルージュ〟と〝自信ネイル〟ね! このルージュを塗ると処女でも口が上手くなんの。キスもおしゃぶりもネ!」 「お、っう」 「んでネイルは、どんだけ自信ない時でも手だけは自信満々に動いてくれるわーけー。これは貰いもんだからサービス? 的な」 「うん。ツッコミどころしかねぇけど……まぁ、ありがとうな。ズーズィ」 「どいたま〜!」  受け取ったものをポケットにしまって下手くそな笑顔でお礼を言うと、ズーズィはニヒニヒと軽く流した。  プレゼントを配り終えたズーズィは、クルリと背を向けて手を振る。  長い夜だ。またパーティー会場で遊んでくるらしい。 「んじゃバーハハーイ!」  何事も無かったかのように去っていくズーズィを見送り、九蔵はため息を吐いた。  ……実は、澄央とですらわざわざクリスマスプレゼントを交換したりしなかったのだ。九蔵がそういうイベントを一切気にしなかったからである。 〝友達にクリスマスプレゼントを貰った〟  ──こちとら初めてだったってのに、簡単に渡して去っていくんだから、さ。 「はぁ……悪魔ってズルいよな〜……」 「照れているのかい? 九蔵」 「照れてるスね、ココさん」 「照れてません。見ないでください」  九蔵が微かな声でなんでもないふうにため息に乗せて責めると、ススッ、とニューイが隣に立ち、澄央が九蔵の顔をのぞき込んだ。  実に訓練された動きである。  この本人非公認盟友コンビめ。 「ちなみに、俺は明日届くように三人分手配してるス。乞うご期待」 「おやめください」 「ちなみに、九蔵も真木茄 澄央とズーズィのうちへ宅配便を手配していたよ。わざわざ夜中にパソコンと睨めっこしていた」 「おやめください死んでしまいます」  プルプルと震えながら思いっきり顔を上に向けて直立する九蔵の頬は、赤かった。 「ムフフ、ズーズィはクリスマスプレゼントだけは毎年必ず贈ってくれるのだ。私も贈るのだよ。お気に入りにはプレゼントを贈るから、二人のことが気に入っているのだね」  そんな九蔵にピタ、とくっつくニューイは嬉しそうにほこほこと笑う。 「ズーズィは、悪魔の中では優しい悪魔なのだよ」  大事な幼なじみが大事な恋人と大事な盟友を気に入ってくれてハッピーだとばかりに笑顔を見せるニューイ。  なるほど。ニューイがズーズィを嫌にならない理由が、よくわかったぞ。 「うぇーい」 「えーい」  納得した九蔵は、澄央とニューイにサンドされながら、心の中でそっと親指を立てたのであった。

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