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 くすぐったくって慌てるが、ニューイは「うーんどこにも見つからないぞ?」と言ってキスの嵐を止めない。 「んっ、ふ、っやめろって」 「むぅ……私の付けた印だらけで、新しくつけるところがあまりない。過去の私に妬きそうだ。悔しいのである」 「つけなくていい、ぅっ……はっ……あはっ、あははっ」 「こちょこちょこちょこちょ〜!」 「あははははははっ!」  そのうち本格的に擽られて、ついに九蔵は声を上げて笑ってしまった。  というか笑いが過ぎて泣きそうだが、それはご愛嬌。  九蔵が狭いベッドの上をひっくり返ってヒィヒィと笑い転げると、ニューイはしがみついて脇腹を狙い、全力で擽る。  下着一枚の男二人が朝っぱらからなにをしているのやら、だ。ご近所から壁ドンされても文句は言えない。 「あぁ〜っもう無理っ」 「あはははっ」  散々擽られて息が切れるほど笑ったあと、九蔵はシーツに沈み、ニューイは九蔵の上にベッタリと倒れ込んだ。  九蔵を擽りながら自分も笑っていたニューイも疲れたらしい。  アホが二人。お似合いだろう。  ハァハァと荒い呼吸を刻みしばし休息を取ってから、どちらともなく目を合わせて、ニヒッと笑う。 「メリークリスマス、ニューイ」 「メリークリスマス、九蔵」  クリスマスの朝。  恋人とメリークリスマスを言い合えるなんて、これ以上ないくらいクリスマスらしい記憶じゃないか。  文句の付けようがないクリスマスに、九蔵は〝やっぱり来年もクリスマスは休みにしてぇな〟と思った。  まぁ、だいぶゴネたので照れる。  九蔵は目を合わせていられず、「あー、朝メシ食う?」と提案する。  するとニューイはハッとして立ち上がり、クローゼットのニューイの服が入っているところを漁り始めた。 「実は朝ご飯より先に、九蔵に渡したいものがあるのだ」 「え。あぁ、うん。アレか」 「うむ」 「…………」  ニューイの返事に、九蔵も無言でそそくさと立ち上がる。  もちろん九蔵とてアレ、クリスマスプレゼントを用意していたのであった。  友人たちには郵送だが、ニューイにだけは直接手渡ししようとパソコンデスクの影に隠しておいたのである。  いそいそとプレゼントを抱えてベッドに戻ると、ニューイも袋を抱えて座った。  ベッドの上で正座し向かい合う。  自分たちは間違いなくラブラブな恋人同士だが、九蔵は恋人とプレゼント交換をするのは初めてだ。作法がわからない。  たぶん正座して向かい合う必要はないと思う。あと服も着たほうがよかったと思う。来年頑張ろう。 「ではまず、ニューイさんから……」 「はい。私からのクリスマスプレゼントでございます。お納めください」 「はい。頂戴いたします」  スッ、と差し出されたオシャレなラッピングの袋を受け取る。  やけに重い。そして固い。  慎重にリボンを解き、袋の中に手を入れてそーっと中身を取り出す。 「……。こちら、金の延べ棒でお間違いないでしょうか?」 「はい。金の延べ棒でございます」  悪魔規格の金の延べ棒。  レンガブロックサイズ。  九蔵はまた慎重に袋の中へ金の延べ棒を戻し、丁寧にリボンを巻き直した。  別にこの延べ棒を二度と出す気はないというわけではない。  厳重な貸金庫に預ける必要があると判断し、一旦ご退場願っただけだ。 「では続いて俺さんから……」 「はい」 「クリスマスプレゼントでございます。お納めください」 「頂戴いたします」  傍らから四角い箱を手に取り、スッ、とニューイに手渡す。  ニューイはパチンと指を鳴らし、丁寧な包装を破くことなく見事に開封した。  箱の中から現れた分厚い冊子を手に取り、胸の前に掲げて九蔵を見る。

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