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──翌朝。
調理スキルがあがったニューイにより、朝ごはんのラインナップは向上している。
インスタント味噌汁と白米。六個セットのカルシウムが多めなカップヨーグルト。
黄身の潰れた目玉焼きと、包丁禁止令により手でちぎったキュウリ、レタス、プチトマトが添えられたプレート。
もちろん目玉焼きの表面はプルプルなのに、裏面はこんがりである。
ニューイには水を入れて蒸し焼きにし、片面焼きでありながら両面に火を通すという調理法はハード過ぎた。
しかしながら味は問題ないにも関わらず、食卓には妙に緊張感が溢れる。
「ニューイさんや」
「なんだい?」
「昨日夜中に目ぇ覚めたんだけど、お前ベッドにいなかったよな? どこにいたんですか」
「……ト、トイレである」
「そうですか。ちなみに俺さんは尿意で目覚めましたけども」
「うっ……! それはその、あの、ゆ、床など? そ、そういうアレで九蔵の見えないどこかにいたのだ。特訓なんてしていない。悪いことはなにもしていない! 浮気などは誓ってなにも!」
「あー……じゃ、いいかな。危ないことも」
「していないっ」
誰がどう見ても狼狽え、目も合わせられずにバレバレの誤魔化し方をするニューイに、九蔵は情けをかけた。
ドジっ子め。ふかふかのベッドから転げ落ちて床で寝ていたわけあるまいて。
言い訳が下手くそなニューイなのでさほど不安にならずにいられる九蔵だが、代わりにちょこっとの不満はある。
秘密を許せないわけじゃない。
特訓が秘密なら、この恋人さんを我が物がごとく使い協力を仰げと、脳内仁王立ちが捗っているだけだ。
そんな内心をおくびにも出さない九蔵がモグモグとレタスを咀嚼していると、ニューイはコクンと首を傾げた。
「九蔵、九蔵」
「ん?」
「マヨネーズやドレッシングはかけないのかい? 九蔵はいつも野菜に味付けするじゃないか。必要なら取ってくるぞ」
「…………」
モグ、と顎を止める。
確かに乳製品を愛好する九蔵は、ヨーグルトやチーズ、ホワイトソース、引いてはマヨネーズなどのまろやかな味わいを好んでいる。
シーザードレッシングも好きだ。冷蔵庫には両方出番を待っていることだろう。
「……いいんです。生食に目覚めたんで」
「? そうなのかい?」
「そうなのです」
頑なに頷く九蔵に、ニューイはじっと九蔵の様子を頭の先から箸を持つ指先まで見つめて、丁寧に観察する。
やめてくれ。
じっと見られると肉がバレる。
「ちなみにその味覚の変化は、最近九蔵が私に餌をくれる時に断固服を脱いでくれないこととなにか関係があるのかな?」
「や、ないですね」
「ないのか……よかったである。人間は体調で味覚が変わると聞いたのだが、九蔵が元気ならば私も元気だぞ!」
「それはよかった」
「それに九蔵は冷え性だと言っていたからねっ。三月になってもまだ寒いだろう? 風邪を引いてしまっては大変だから、今後もしばらくは着衣で平気である」
「! そうですかっ」
「うむ! だができればそうだな……温かくなったらまた、キミを抱かせてほしいよ。正直こう、触りたくてたまらない時がある」
「ソウデスカ!」
ワキワキと手を動かすニューイ。
九蔵は一瞬救われた気がしてギュンッ! と気分を上げたが、すぐにギュンッ! と盛り下げた。
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