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なんてこったい。
なにも言われないので大丈夫だと思っていたものの、やはりニューイもおかしいと思っているようだ。
というか、むしろ結構気にしている。
一時は毎日九蔵を抱いていたニューイだが、九蔵がボディの緩みに気がつき始めた一週間ほど前から一度も九蔵を抱いていない。
その前から夜の闇の中でしかシていない上に、しっかり触ろうとすると本気で拒否される有り様だ。
よく考えれば男としてかなり凹む態度だと思う。ニューイじゃなければシリアス案件だった。
「ちなみに季節的なものではなく私にダメなところがあるなら、ベッドでの態度を心より改める所存なのだが……?」
「ニューイさんはパーペキです」
いやニューイさんも気にしている。
これは──マズイぞ!
九蔵はうおおお! と脳内で雄たけびをあげた。
ニューイがのほほん悪魔なだけで、本来悪魔は主に金暴力セックスで形成されている。地位名誉権力でもいい。そんな欲望の権化相手にセックス・レスは危機だ。
早急にボディメイクしなければ!
焦る九蔵は取り合えずこの場は「まあ初夏くらいにはなんとかなるから」と誤魔化し、話を無理矢理終わらせる。
するとニューイは食事を続けながら「ん!」と声を上げた。
今度はなんだ。
「そういえば昨日仕事場でいただいた生とろミルクプリンが冷蔵庫にあるので、好きなだけ食べておくれ」
「え」
「ムフフ。私がキミの話ばかりをするから、私の恋人がミルク系の食べ物を好きだということをみんなが知ってくれているのであるっ。もちろんお礼を考えているから、九蔵は気にせずご賞味してほしいよ」
(優しい彼氏の悪魔的な誘惑──ッッ!!)
個々残 九蔵。
交際後初、ニューイの笑顔を呪う。
九蔵人生史の記念すべき見出しになりかねない案件に、九蔵は「ハハハ」とド下手くそな笑顔を返しつつ、白目をむいた。
プリンよりとろけそうなニッコニコの笑顔のニューイは、間違いなく純粋無垢で悪意などない子犬である。
ただ〝やったねご主人様! 大好きな乳製品だよ! みんな優しいね! 世界あったかいね!〟と言わんばかりにキラキラと瞳を輝かせてご報告しただけだ。九蔵が喜ぶと信じて疑っていない。
しかし現状、それはただのカロリー。
ノーと言うべき、重大案件。
九蔵はゴクリと唾を飲む。
なら、簡単な話だろう。ちょっと軽い話し方で傷つけない程度に「ありがとう。でもごめん、俺ダイエットしてるから甘いもの控えてんだよ」と言えばいい。
「……あとで、いただきますね」
「うむ!」
──あぁ、俺のバカヤロウ。
喜色満面、ホンワカホンワカと花を飛ばすニューイにノーと言えるわけがない九蔵は、自分のヘタレさを脳内でボコボコにリンチした。
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