312 / 459

312

「え〜? 嫌がられると全身巻きついて拘束監禁プレイしたくなんだけど〜」 「巻きついてもいいけど、お酒はダメだってぇ……ズーズィのせぇで、だらしない体に戻るかもしんねぇよ」 「ボクのせい違いますゥ! クーにゃんがちゃあんとお断りできねーからっしょー?」 「俺、やだって言っただろぉ」 「断り方がクソカス弱弱なんだよなぁー。ニュっちがまたプリンどーぞとかケーキどーぞとかしたらどうすんのー?」 「えぇ~……? 食べちゃう」 「ほぉらぁ~! せっかく駄肉燃焼しても食べたら意味ないじゃん! な、ん、で! わざとねちこくお誘いしたのぉ」 「ボクってヤサシー!」とワインボトルを煽るズーズィに、九蔵はボスンッ、とソファーへ倒れ込んだ。  図星を突かれた。  辛い。飲んだくれたい。  だけどそもそも自分がきちんと断れる人間だとしても、ニューイがよかれとくれたものをお断りできるわけがないじゃないか。  他人であればさり気なく断れる。  だが、好きな人はズルい。ズルいのだ。 「だから、ズーズィも断れねぇの」 「ン~?」 「だって友達、だろ? ンフ。好きだから、いっしょに飲みて、かったんでぇ……俺にもワイン、ちょうだいです」 「アハッ! お前ホントボクら以外と飲むのダメダメねぇ~? お持ち帰り余裕無防備マンすぎてウケるわぁ。ニュっちが哀れで爆笑が止まんねーからっ」 「え〜……? でも俺、ニューイなんか知らねんだぁ」  九蔵はゴキゲンなズーズィから白のワインボトルを与えられ、起き上がりつつ拗ねて見せた。  ズーズィが「お? ニュっちマンセーのクーにゃんがニュっちにへそ曲げてんの、珍しいじゃーん!」と瞳を輝かせて迫る。  楽しいことなんてなにもない。  ニューイの愚痴が溜まっているだけだ。  なんせ九蔵に秘密を作っているし、拗ね方がしつこくて子どもっぽい。 「マ? ヒミツってなぁに?」 「知んねぇ……でも、夜中にこう、コソコソって消えちまうんだぜ」 「あ、それね。把握」 「俺さんとしてはぁ、たぶんドゥレドとイチャイチャしてんだろー……って。ニューイ、夜にゲームしたがるから、ほらぁ……最近マルカとかも? やったことなかったくせに、嘘つくの下手っぴでさぁ……うひっ。かわいいけどさぁ……」 「ワーオ、名探偵クーにゃん! ニュっち既に哀れだった件について」 「あ〜……ニューイかわいいよ〜」 「アハッ! ボクのがかわいいよ〜!」  ニューイの特訓がモロバレだったことを察したズーズィに、九蔵はコツンと肩を預けながら甘えた声をあげた。  グリグリとズーズィに額を擦りつけつつ、酔いどれ九蔵は管をまく。 「ニューイちゃん、バーカ。俺をいちばん、頼ってくんねーの……?」 「クヒッ。そっちに妬くんかーい」 「うん、妬くよぉ……だから筋トレしてんですぅ。ほーよー力とか、なんか、俺もほしーんだよなぁ……いーこいーこって」 「えー? それならたぶんもうあると思うケド、とりまボクにいーこいーこしとく?」 「あはっ、ズーズィ悪い子だろぉ〜?」 「じゃあ悪い子悪い子でいーよ?」 「わは。悪い子悪い子」  ズーズィの肩に回した腕を捻り、九蔵はズーズィの頭を雑にワシワシとなでた。  もともとニューイ以外にはほぼ自主的に触れない九蔵。  ニューイと触れ合っていない今なのに、ズーズィにこうして触れることは自分でもあまり躊躇がなかった。  ニューイ相手なら「二の腕のプニ感がバレる!」と危惧し完全回避する。  それだけニューイにはええカッコ(・・・・・)をしたくて、プニ感がバレたくない唯一無二の相手ということだ。  ズーズィと撫であいを繰り広げながら、九蔵は密かに自分の恋心の一途さをフムフムと実感する。  とはいえ、絶賛強制お触り回避フェスティバル中のニューイからすると九蔵とじゃれ合えるズーズィが羨ましすぎて、それどころじゃないだろう。  泣きながらしがみつきそうだ。  ジェラシー関連ではないのだが。  乙女コンテンツなら確実に嫉妬の炎でズーズィごと燃やされる展開なこの状況。  ニューイは共通の友人にはヤキモチを妬かないので、いつも平和である。  けれど、それもよく考えると──九蔵はちょっぴり不満な気がした。

ともだちにシェアしよう!