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「あー……まぁ、基本人間ですからね。男も女もあんま変わらないと思いますよ」
「そうなの?」
「はい。ただちょっと、男尊女卑とは違う意味で、女より男が上でないと! っていうプライドはあるのかもしれねーです。負けず嫌いではあんのかな……欲望にもわかりやすく忠実。と、思います。かっこつけで、愛情表現が割と肉体物理? かも」
「なるほど! つまり永遠の中学生って感じかな?」
「悲しくも否めない」
「なるほど~! それならわかりやすいねっ。バカにしてるわけじゃなくて、そのくらい単純な思考だと思えば許せるし納得できるってことだよ」
わかりやすくて申し訳ない。
眩いばかりのニコニコ笑顔の夕菜にワンパンで男という生き物を要約されてしまい、九蔵は反論できずに「ハハハ」と笑った。
男はエターナル中学生か。
ちょっと、いやかなり複雑である。
とはいえつい先日男のヒミツ・プライドを拗らせていた九蔵なので、異議を唱える手札は皆無だ。
事実なのでなにも言うまい。
それに中学生くらいの思考回路だと思って接してもらっていたほうが、女性から見ると〝くだらない〟と言われるプライドやらに理解を得られるようなので、これはこれでありだと思う。
むしろ九蔵にとっては、頭の作りとして共感能力の高い女性の思考回路のほうが、わかりにくくて難しい。
「そうか? 女心だって単純だよ」
九蔵がそう言うと、キューヌに箸の使い方を教えていた榊が一蹴した。
「そうとは思えませんけど」
「単純だよ。所詮動物なんだから」
「元も子もない」
自分の心の話でもあるはずなのにサクッとアニマルでくくる榊に、九蔵は半身距離をとる。
この場にはキューヌと夕菜がいるのだ。そんなふうに女心を軽々しく扱って、反感を買ったらどうするのだろう。
これは九蔵の偏見だが、女性は共感できなければ口撃すると聞く。
たいてい次の時には仲良くしているのでよくわからないが。
「そうそう、所詮動物だものね~!」
「そうねぇ。女だってカンタンだわぁ」
「ほらな」
「お、女心って難しい……!」
まさかの全員共感であった。
当然の顔をする榊に、九蔵は頭を抱える。わからない。女心がわからない。
単純だと言うのなら、なぜ世の男たちは美女の一挙動に振り回されて恋心を粉砕されまくっているのやら。
「それは女が大切にしているものを男がわかってないからよぉ」
「そうね! 例えばお友達の困ったところを相談するのは、『お友達との縁を切らずに解消する方法はないかしら?』ってこと。直接言えばいいじゃん、じゃあ解決にならないからわかってないわね、って言われるの」
「あー……なるほど」
「そうだな。プレゼントが安物で怒っているわけじゃなく、『あなたにとってその程度の価値の女なの?』ってコトだろ? 本当に欲しいものなら、気持ちを込めて選んだものなら、それを伝えれば普通の女の子は怒ったりしないよ。怒る子はちょっと気難しいね」
「あーなるほどぉ……!」
「ウフ。〝大事なのは気持ち〟。この意味を、男はたいてい取り違えてるわぁ。そして気持ちは見えないの。伝えないとね?」
目からポロリ。
九蔵はウロコが幾枚か落ちた。
女性は男よりも気持ちを大事にする生き物なので、伝えることを求めている。
そう思うと九蔵は、ほんの少し女心がわかった気がした。童貞だが。
「でも、それがイコール単純とはいかないような気もしますが」
「単純の構成成分が違うんじゃない?」
「ンーそうかもねぇ」
「構成成分?」
「人によるけど、そうだな……」
九蔵が首を傾げると、三人はうーんと考え、それぞれ口にする。
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