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「よく言われるのは、顔、金、性格?」 「そ。男は顔、体、性格でしょ? アタシが言うんだから間違いないわぁ」 「あははっ。無意識の欲求を言葉にするとたぶんそうなるよね〜」 「つまりアレよぉ。お金かエロかなだけで、表面的に求めていることはオ、ナ、ジ」 「ま、本能さ。遺伝子を残すために、男は肉欲のエロに惹かれる。遺伝子を守るために、女は先立つ金に惹かれる。当たり前だろ?」 「ウフ、そうねぇ……だけど肉欲に惹かれる女もいるわぁ。そうでしょ? サカキ」 「フフ、お望みなら大歓迎」 「ん〜ほんとキュウちゃんは店長が大好きだね〜。こりゃエロスより愛だわ!」 「あらミソちゃん。愛もエロスも、よ。女は欲張りじゃなきゃ」 「そうだよ、ミソ。その女の子をかわいがりたい私みたいな不埒な人間が、女の子の欲張りを叶えるものだろ?」 「うーん。でも二人は私の旦那さんと違いすぎてあんまり参考にならないのよね」 「「そう? 残念」」 「ココちゃんカムバーっク! 私の相談相手はやっぱりココちゃんがベストよっ」 「ミソ先輩。俺男ですミソ先輩」  流れるようにイチャイチャし始めた榊とキューヌの女豹コンビに、夕奈は九蔵へヘルプを出した。  肉食女子よりも、木陰にひそむカメレオン系素朴男子な九蔵のほうが安心感があるらしい。  二人の世界に入る榊たちを後目に「雑談しましょーよー!」とお誘いをかけられる。  そう言われても男側の九蔵にお嫁さんの困りごとなんてわからないのだが、夕菜はそこのところをわかっているのだろうか。  尋ねてみたが、夕菜はキョトン。 「でもココちゃん、同棲中の彼氏さんがいるんでしょ?」 「ゴフッ……いや待、そ、ソースはシオ店長ですか? キューヌですか?」 「女の勘!」 「出た! 正解率九割! 驚異の目力!」  九蔵はサッと頭を抱えた。  夕菜はドヤリと親指を立てている。  女の勘なんて確証のないオカルトなのにドンピシャ大正解なのだから、もうちょっとした超能力だろう。  予想外の襲撃に打ち震える九蔵に、夕菜は「大当たりならお仲間よね~」とニコニコ笑いかける。 「明らかにバレバレで問い詰めても、この期に及んで誤魔化す時とかない?」 「そりゃまあ、ありますけど……」 「でしょー? お小遣いだって結局なにに使ったか言わないのよ。言えば追加であげるって言ってるのに」 「あー……ありますね。はい。変なところでかっこつけてんだよアイツ……」 「お、ココちゃん彼氏もそうなの?」 「ええ。朝から意見交換会でしたとも」 「わかるわ~。というかそもそもがねっ? 『シャンプーねぇぞ』って言われたから『じゃあ帰りに買ってきて』って言ったのよ! そしたら『金ねぇからムリ』って、まぁ生活費用カードを渡すつもりだったんだけど、気になるじゃない? だから『なんでないの?』って言ったら黙るのよね! お小遣いなくなったのよね! 普通にお買い物は頼んだけどね!」 「わかります、わかります。うちはそれ系通販でまとめ買いですけど、食品とか調味料はね……『コーヒー粉がなくなったである』って、なんで報告だけだよと。買い物担当が俺って決まってねぇんだからお前が帰りに買ってこいと。俺は見ての通り夜勤明けで今から寝るんだよと」 「わっかるわ~! だからわざわざこれをこれだけ買ってきてねって言ってるのに、なにゆえあなたは嫌そうな顔をなさるのかとっ」 「コーヒーが好きなのはお前だぞと」 「なくなったシャンプーはあなたのスカルプケアシャンプーよとっ」 「でもいざ買い物を任せると違う銘柄のわけわかんねーコーヒー粉買ってくるんですよね……メモ持たせたしわかんなかったら店員さんに聞けって言ってんのに、毎回初めてのおつかい並みに手がかかる……」 「そう! 詰め替え用じゃなくて、容器付きのを買ってくるの……! あの人、おサイフにも地球にも優しくないの……!」 「今度からパッケージの写メ撮らせてから買いに行かせるか……」 「今度からシャンプーや洗剤は私も通販まとめ買いにするわ……」 「「ただこんなに手がかかっても別で暮らしたいとは思わないのよねぇ(んだよなぁ)~……」」  二人してカウンターに肘をつき、ほぅ……と首を傾げてクエスチョン混じりの息を吐いた。

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