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 一方その頃。  ヘンゼルくんとグレーテルちゃんの世界を正している澄央とビルティは、案の定──魔女な店主に捕まってしまっていた。 「だが後悔はしてない」 「ナス、ナス」  魔女のお菓子を食べると強制的に捕まるというルールが物語にはあるらしく、それを承知で止めなかったことを気にしているビルティに、澄央はピースをする。  胸を張る澄央を前に、薄ら笑いはデフォルトだが本トカゲ的にはアワアワしながら澄央の名前を呼び続けるビルティ。  澄央としては三食昼寝付きに風呂、トイレありの牢屋に入れられたヘンゼルくん立ち位置なんて、ピンチでもなんでもないのだ。  しかしグレーテルちゃん立ち位置のビルティは、澄央の隣というベストポジションを確保できない状況がもう危機的バッドエンドらしい。 「ナス、ナス」  澄央恋しさに檻の隙間から細っこい両腕をめいっぱい伸ばし、しょもんと眉を垂らしている。  ……全然関係ないが、澄央の周りには妙に肉付きのよくない男が多い気がした。  一応個性はある。  エターナルマイズッ友こと九蔵は痩身系。しっかりした骨と身長を持ちながら肉がつかない骨骨しい男だ。  華奢には見えないのに横から見ると薄っぺらく、シルエットの随所に骨が浮いているタイプである。  越後は思いっきり華奢なタイプだろう。典型的なモヤシ体型だ。メシはなかなかたっぷり食すので、生まれつき太らない体質。  澄央も同じだが、澄央はきっちり消化し身に着けてはとんでもない燃費の悪さで全てのカロリーを燃やし尽くしていた。  このガタイを見てほしい。純和製で百九十センチ間近。筋肉もしっかりある。  ゴホン。少し話がズレたが……澄央がなにを言いたいのかと言うと、ビルティの手は自分よりずいぶん細っこいなぁ、ということだ。 (普通に筋肉もあってきっちり男なのに、骨が細いんスかねぇ……ココさんみてーに仕草とか印象に男くささもねぇし、イチゴみてーにヒョロいかわいさもねぇし……絶妙に美人スねぇ……) 「ナス? ナス、トカゲ好き?」 「なんでそうなったのかはわかんねスけどトカゲは普通に好きスよ」 「! 付き合う?」 「付き合わねッス」 「尻尾ガチギレそう」 「ガチギレて」  伸ばされたビルティの手をにぎにぎしつつ、澄央はぷっと噴き出す。  ビルティといるとちょこちょこ笑ってしまう。相変わらず思考回路はよくわからないが、だからこそ愉快な気がした。  ツボに入る澄央に対し、ビルティは澄央の笑いどころがわかっていないのでどっちもどっちである。  まぁ、捕らわれたことはそう気にしなくてよい。ここはなかなか快適だ。  そう言ったが、ビルティはチロロ、と舌を出して檻にしがみつく。 「魔女の檻、ヘンゼルくん出れない。グレーテルちゃん壊せない。そういうルール……ククク。でもオレ、イケメントカゲ。トカゲ強いよ。割と強い。魔女、燃やす。ね。待ってて。ね。ククク……」 「? なんか言ったスか?」 「なんも。ナス気にするない。オレ頑張る」 「うん? ありがとッス。ビルティもあんま気にせずス。俺も頑張るスから。んで魔女さん呼んできてほしいスよ」 「わかった。でもオレ気にするないない。オレわざとした。アラフォートうまい。ノレマンドうまい。ツルベーヌうまい。一番アラフォートお気に入り。アリスごめん。黒ウサギごめん」 「凄ぇ。言ってることが一切わかんねス」 「ブルボソ神」 「理解。同意」  会話と思考回路は迷宮入りだが──お菓子を称える気持ちは完全に一致する澄央とビルティ。  大好きな澄央を助けるために意気込むビルティとピンチをものともしないマイペースな澄央は、着々と原作通り(?)に物語を進めていくのであった。

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