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「はー……続編が出る前から自我が芽生えてたってーと、オオカミ歴五百年越えだろ? それがお前、ウサギ虐めって。恥ずかしくないんですかね」
「はぁい……」
「てかそんなに強いなら村を襲った時に食いつくすかきっちり近くで見張って牧場にすればいいのにさ。ちょっと安定性に欠けるっつか、詰めが甘いっつか、もっと本気でオオカミやれよっつか」
「はぁい……おっしゃる通りですボスゥ……」
「ボスはやめろ」
「はいすいませんごめんなさい二度と逆らいません人間様だからどうかお許しくださいもう勘弁してくださいぃぃぃ……ッ!」
圧勝を超えてオーバーキルである。
びえええん! と大きな体でべそをかくオオカミを前に、九蔵は困惑と疲労の混ざった表情でオオカミを見上げた。
いやだって、まさか泣くとは。
ただ少し意見交換会を行っただけなのに、マジ泣きされるとは思わなかった。泣かせる気はなかったのだが。
九蔵はオロリと困り果てる。最早話し合いどころではなさそうだ。
べそをかくオオカミはすっかり九蔵に従順になってしまい、怯えきっている。とてもじゃないが平和的な解決とは言えない。
しかしオオカミを泣かせたところで、彼は改心したわけでも納得したわけでもない。
九蔵にメンタルをへし折られることにビビるだけでは、九蔵がいなくなればまた同じことをするはずだろう。
なんなら作戦の粗を抉られたせいで、もっと緻密な策を練る可能性すらある。
これは明確な悪化だ。ハッピーエンド的には、最有力候補だった非公式リーダー・九蔵の負け。
「あの、オオカミさん」
「えぐえぐえぐえぐっ」
「うん。わかった。一旦休憩挟みましょう。ちょっと作戦タイム入ります」
えぐえぐと泣きべそが止まらないオオカミとの会話を諦めた九蔵は、悲報を抱えてすごすごと草陰に戻った。
お留守番三人衆が順にポン、と九蔵の肩を優しく叩く。慰めが身に染みるぜ。
自分はどうやらバトった人外を泣かせる運命にあるらしい。勘弁してくれ。九蔵は凹むが、諦めるわけにはいかない。
引き続きコンテニュー。──だが、九蔵が敗北したならば、残るチャレンジャーは一人しかいなかった。
「よし、ちょっと行ってくるのだ!」
「「「…………」」」
意気揚々と立ち上がって歩き出すは、我らがリーサルウェポン……もとい、ウィークポイントであるニューイさんだった。
止める間もなく出ていったニューイは九蔵を見送るより自分が行くほうが万倍気楽らしく、ノーテンキそのものな足取りだ。
しかしそんなニューイの背中を見つめていた三人は、顔を見合せる。
「「「大丈夫かなぁ〜……!」」」
そして同時に悩ましげなリアクションを取りながら、各々が頭を抱えた。
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