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「はい終わったでござるー! はい終わったでござるー!」 「ニュ、ニューイ~、無事に帰ってこれるさ~っ? これはただぶん殴るだけじゃなくて唆して勝利する話さ〜! つまり頭よくないと勝てないってことさ~!」 「さりげ俺の彼氏様をディスるのはおやめなさい。ニューイさんは顔が他の追随を許さないレベルでいいんだから他はいいんです」 「お主も結局ディスってるでござろうがッ!」 「ニューイは物理以外のパラメーターバグってんだから仕方ないだろ!」 「ほらやっぱり彼奴ポンコツの類なのでござるなはい終わったでござるもう全然終わったでござる勝ち目ゼぇぇロぉぉ!」  四つん這いになり地面を叩きまくり、絶望の雄たけびをあげるウサギ。  ボインボインと跳ねるシッポは、お人好しなニューイが虐められやしないかと心配でならない様子だ。九蔵とて内心ハラハラが止まらない。  勢い余って実力行使? ありえる。うっかり破壊神のニューイの説得なんて、力に訴えるかドストレートに頼み込むかの二択だ。  根っから捻くれた傲慢俺様タイプな上に今は九蔵に泣かされてどん底ネガティブモードな拗らせオオカミを知略で懐柔する難易度は、どう考えても高いはず。  この際結末はどうでもよかった。  ただ変に怪我をしたり逆に泣かされて帰ってきたりはしないでほしいと、九蔵はニューイの背中を祈るように見守る。  ──……が? 「…………」  見守る九蔵の表情が、ハラハラドキドキから、徐々になんとも言えない微妙な表情へと変化していった。  オオカミのそばにたどり着いたニューイが、崖を前にポンとオオカミの背を叩く。  なにやら缶コーヒーらしきものを手に持っている。一つをオオカミに差し出し、スムーズにオオカミの隣を陣取った。  まるで上司にガチで怒られた後輩OLを慰める先輩OLのようだ。  ニューイはプルタブを開けようとして、案の定中身を滴らせていた。  それを見たオオカミが代わりに開けてやっている。嬉しげなニューイ。  はっきり声は聞こえないが、断片を繋ぐと「キミがいてくれてよかったよ」「おかげで缶コーヒーが飲めた」というようなことを言ったようだ。  オオカミが泣きながら笑っている。  崖を前に二人、缶コーヒーを傾ける。  ここらでシッポとウサギが微妙な表情でOL劇場を見ている九蔵に気づき、九蔵の両サイドを固めて視線を向ける。 「「「…………」」」  ニューイがオオカミの巨体をポンポンと慰めながら数言話すと、オオカミはウォンウォンと男泣きをした。  泣いている男にかける言葉などない。  微笑むニューイが無言でオオカミの巨体をなで、言葉なきエールを送る。オオカミはくっと缶コーヒーを飲み干した。少し晴れた表情だ。 「……鬼上司と仏先輩……」 「……で、ござるか……」 「……なんでこっち見るんですかね……」 「「だってほら」」 「うんでもわざとじゃねんだ」  酷い言われようである。  的を得た例えはやめてほしい。  ボソボソと話しているうちに、オオカミと話し合いを終えたニューイがオオカミに片手を上げ、颯爽と帰ってきた。  九蔵と目が合い、ニヘラッ! と自動的に喜色満面になるニューイ。  見えないしっぽをピコピコっと振りながら、さぁ九蔵のホメホメタイムだ! とばかりにデレデレなニューイが、三人の前に立ち親指を立てる。 「オオカミさんはもう金輪際ウサギ村には手を出さないそうだよ! 心を入れ替えて、グルメを生かしたレストランでも開いてみるそうだ!」 「いやコミュ力高すぎんかこれ」 「生まれついての悪魔でござるな」 「悪魔はみんな誘惑堕落の申し子さ〜」 「なぜにっ!?」  褒められ待ちだったはずが真剣に感心されてしまい、ニューイはカロン! と頭蓋骨を揺らすのであった。

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