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  ◇ ◇ ◇  悪魔の世界らしいファンタジックなディナータイムとバスタイムを終え、四人はつつがなく就寝の途についた。  今夜の部屋割りは九蔵とニューイ。  そして、澄央とビルティだ。  屋敷に部屋は有り余っているがニューイが「部屋はもうない」などと苦しい言い訳をして、有耶無耶に澄央とビルティを同室にしてくれたのである。やったぜ。 「ククッ」 「突然のよっしゃー」  バスローブ姿のビルティは、バッと両腕を真上に上げてそのままバタバタと動かし、喜びをあらわにした。  九蔵の独り言からヒラメキを得て澄央への恋心を確信したビルティは、ずいぶん澄央にアピールしたのだ。  けれど意思疎通に難があり、遊戯室での旅では手応えを感じなかった。  さっきの食事中だって、九蔵たちと雑談をしながらも澄央の食事の世話をした。いつもは九蔵の役目であるそれをかってでてナスナスと一方的に絡みまくる。  しかし澄央は嫌がらず面白がっていたものの、アプローチは伝わっていない。  あと話題も割とズレている。気にしない。だが、アプローチは気にする。  澄央が風呂に入っているうちに練った作戦会議で〝九蔵とニューイには伝わるのに澄央は耳が変なのか〟と言うと、それは違うと二人揃ってバツを出された。  困った時のアリスちゃんと怒ると怖い憧れ悪魔な黒ウサギからバツを出されると、拗ねてしまう。  あぁ、なんて悲恋だろう。  自分は一度惚れると骨の髄までねちっこく惚れ込む質なので、ともにいるだけで毎秒好きになるというのに。  しかしそれももう、ここまでだ。  ビルティの恋心に本人より先に気づいていた九蔵のアシストと九蔵に従順なニューイのサポートにより、澄央が恋人を欲している言質を取った。理想の条件もゲットである。  イケメンで料理上手で手があって恋人だと言いふらす男?  なぁに、簡単じゃないか。  イカしたトカゲな自分はイケメンで料理はできる。黄色と赤のヘンテコなオムライスを作ればいい。オムライスは好きじゃないけれど毎日作ろう。  手を繋ぐなんて朝飯前だ。トカゲには手がある。蛇と違って手を繋げる。  他にしっぽは繋いであげられないが、視神経や夜の夢くらいなら繋いであげられる。  ほら、ほら。  並び立てるうち、ビルティはどう考えても自分が澄央の理想のタイプである気しかしなかった。つまり両思いだ。やったぜ。 「なんでバタバタすんだろ……」 「…………?」 「と思ったらフリーズッスか?」  上げた両腕をさらにバタバタやるビルティは、はたと動きを止めた。  いや、待てよ? ビルティを手助けして澄央に余計なお世話と言われると死ぬしかない九蔵が念入りに引き出した情報によると、澄央には好きな人がいない。  理想のタイプであるビルティと両思いなはずなのに、好きな人がいないのはおかしいと思う。ビルティはスッと腕を下げる。  けれどキュピンとヒラメキを得たので、下ろした両手をポンと打ち鳴らす。 「ナス、ナス」 「お。やっと俺という現実を直視してくれる気になったスか、ビルティ」 「? オレずっと見てるぜ。ナスしか見てない。直視してくれる。安心。だからナス、好きなトカゲいる?」 「そんな接続詞の使い方ある?」  あるとも。今使った。  ビルティがそう説明会すると──実は開幕からずっとベッドにてビルティに馬乗りにされていた澄央は、「確かにそスね」と頷いてくれた。  だから澄央が好きだ。  ほら、正しい使い方だろう?  澄央に好きな人がいなくても、好きなトカゲはいる。そうに違いない。やっぱり両思いである。やったぜ。

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