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「いいスか? はっきり、ビルティと今すぐどうこうなんて全く考えられねぇス」 「いくない。なんで?」 「俺はこの人ならって確信できるような人じゃねぇと付き合わねぇって決めてるんスよ。ビルティのことはまだよく知らねぇんで付き合いたくねぇの。おわかり?」 「全然? わかんね」 「わかってほしいス」 「わかんね。いい?」 「いくないス」 「ナスオレ恋人したほうがいいよ。オレは恋人したほうがいい。だってオレ、ナスの理想的と思う。ククッ……運命だぜ?」 「運命?」  そう。頷き、ビルティはここぞとばかりに澄央の理想を指折り語る。  イケメンで料理ができて手があっていつでも誰にでも澄央は自分の恋人だと言いふらせる。簡単なことだ。  ビルティは澄央の恋人マーケットのお買い得品で、オススメ品。  指を折り終えてニマリと三日月を浮かべ、掴まれた両手を構いもせずにぐっと首を伸ばして顔を澄央に迫らせた。 「すおう、あいしてるよ」 「っ……」  鼻先がちょんと触れ合う。  あ、い、し、て、る、よ。  甘い甘いあの澄央の好きなお菓子たちのような甘えん坊の声を出して、ビルティは飴玉を転がすふうに一文字ずつを告げた。  澄央は黙ったまま眉を困らせる。  なにを考えているのか読めない顔色だ。  まぁそもそもビルティは、人間や悪魔ほど人の考えなんて察せないので結局は読めない。なので澄央がずっとこのままでも問題はないのだ。薄ら笑いがククと鳴く。 「信じられないなら、説明しよう」  ビルティはチロ、と舌をのばして澄央の唇を舐めた。顔色が一切変わらない澄央の指先がピクンと動く。 「きみのそのかわいい目がとても好き。一秒でも長く映っていたい」  口説き方は練習していた。  ビルティは舐めた唇に自分のそれが触れるギリギリ薄皮一枚まで近づき、火照った吐息をフゥ……とかける。 「それから唇。オレの名前の形になるのを、いまかいまかって待つ。してる」 「…………」 「あとは声も好き。笑った時の音が好き。次は……うん。んー、うん。忘れた」 「ふ、忘れたんスか」 「忘れた。けどオレ、手が一番好き。なでる。握る。触れる……好き。ナス大好き」  練習したセリフを途中から忘れてしまったビルティだが、ニマリと笑みを浮かべて好きだ好きだと伝えた。  ねぇお願いと恋人にオネダリする女子高生のような、猫なで声。  ねだられた澄央は「口説き方、ニューイの監修入ってるスね。カンぺ出したなマイフレンド……」とニューイに恨みがましいテレパシーを送った。  大正解。談話室でご教授願った。  ビルティはドヤるが、澄央にとってはまさに悪魔的な口説き方である。  馬乗りに密着されたまま唇を舐められ、緑の髪の艶めかしい美人な男が褐色の頬をほのかに上気させて、あなたが好きよとすり寄る口説き方。  そしてこれだけ大胆なくせに、キスは寸止めで吐息が触れるばかり。  ここはベッドで夜なのだ。

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