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そんなことをぼんやり考えつつ余韻に浸り、ピクン、ピクン、と震えて掠れた声で鳴く。数秒蕩けて、やっと快楽の波が収まり始めた。
「ん、っ……ふ……あ〜……魂なしであんな何回もイクの、やべぇですね、はい……」
「それはこちらのセリフだよ、九蔵。キミがあんなふうに乱れると、私への影響がたいへんだ。はー……やらしいが過ぎる」
「ニューイさんは語彙がだんだん現代っ子になってきたよなぁ……、っん、ぁ……っ」
まだ中に突き刺さっているのにそーっと仰向けに転がすニューイを見上げて、九蔵は事後特有の倦怠感に淫蕩する。
ニューイはユルユルと軽く腰を動かし脱力しきった中をかき混ぜながら九蔵の両足を開き、膝に尻を乗せた。
つかの間のピロートークを交しつつ、淫猥臭いシーツの上で大の字の九蔵は、フカフカ枕を抱きしめて胸元を隠す。
どうせおかわりするのだろう?
性欲をお残しされたのだ。九蔵だってすぐにまた復活してしまうが、恥ずかしいので気持ちガードをしておく。
いざ二回戦! と挑むニューイはニコニコ嬉しげにしっぽを振り、新たなマナーを装着した怒張がぬるる……っと柔らかな胎内へ差し戻った。
「んッ……ぁ、んん……ヤんのはいいとして……次はどんなプラン?」
「むふふ。候補はたくさんあるのだよ? だけど困ったことに選べない」
「ぷっ、真剣になに言ってんですか」
悪魔印のローションがぺったんぺったんと九蔵の体を這いずり、結合部にまとわりついて隙間から腸内を埋めていく。
悪魔の世界にいる時はあまり自重しないので、悪魔能力は使い放題だ。
簡単に熱をあげるお互いの体温で結合部から溢れたローションが、抜き差しするたび二人の間で粘っこく糸を引く。
「う、んっ……あっ……」
「真剣にもなるさ。なんせせっかく今日はいいスパイスがあるのだよ? 使わない手はないと思うのである」
「スパイス? っあ、ぅ」
ゴキゲン悪魔が「そう、今日限定のスパイスだ」と言うものの、思い当たるフシのない九蔵はキョトンだ。
バレンタインデーのあれそれがあったので知ったかすることはできない。
枕を抱きしめ送り込まれる快感に耐えながら考えてみるが、やはりわからない。
「ほら、九蔵も知っているじゃないか。ふふ、たまにはこうしてドキドキしながらするのも興奮するね」
「えと、俺も知って、て、っく……んっ……なんでしょう……ふっ……」
「? 忘れたのかい?」
忘れた? なにを?
そこまで言われても思いつかない様子の九蔵に、ニューイはぐっと身を乗り出し、九蔵の耳元に唇を寄せる。
「なにって、真木茄 澄央とビルティの客室は、この隣なのだよ」
「──……っぁ」
耳たぶをちゅぷりと舐められながら低く囁かれた九蔵は、ゾクゾクゾク……ッと悩ましい官能にシビれた。
それは確かにスパイスの味だ。
背徳的な、悪魔の囁き味。
「壁の厚みがどのくらいだったかは壁次第だからね。もし薄くなっていれば九蔵の声は聞こえてしまうだろうし……二人がうまくいっていれば、あちらの声も聞こえてしまうかもしれないぞ?」
「ふぁ……っにゅ、うい……」
「ふふ、カワイイ九蔵……さぁどうする? キミの気持ちいい声を聞かせてあげるかい? それとも聞き耳を立てて、二人の声をサウンドポルノに盛り上がるかい?」
ゾクリと這い上がる官能に孕んだモノを締めつけ、九蔵は吐息に近い甘い声で仄かに恋人の名を呼ぶ。
そんな言い方で、炙らないでくれ。
恥ずかしくてはしたなくて最低で淫らで、だからしっくり感じてしまう。
普段は常識人で淡白な顔をしていても、ベッドで裸に剥かれた九蔵の本性なんて、むきたてのゆで卵のように無防備だ。
この世で唯一薄皮の下の本性を知っているニューイは、ニコリと美しいほほえみを浮かべて九蔵の唇にキスをした。
「壁に両手をついてごらんよ」
──私の愛しいお姫様。
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