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  ◇ ◇ ◇  翌朝。  それから九蔵たち一行は悪魔王にご褒美をもらい、揃って人間の世界へ帰還した。  しかし一行。なぜビザ更新中のニューイと遊戯室のキャラクターであるビルティが一緒にいられるのか? というと、からくりは悪魔王からのご褒美にあった。  悪魔王にご褒美はなにがいいかと聞かれた九蔵は〝自分が生きている間はニューイのビザをフリーにしてくれ〟と願ったのだ。  ちょっと割かしそれなりにかなりマジでと言った具合に、もうビザの更新で離ればなれなんてこりごりである。  性的にもこりごりである。  昨日の壁越しリモートなセックス中継やその後のあれそれで推して知るべし。  詳細は伏せるが、紳士に見えて野獣なニューイを放置しすぎると大変だ。まぁその、自分も大変だ。  とにもかくにも性格が温厚なニューイなので危険はないはず。  故に「自分が生きている間なら自分が見張るのでご褒美はフリービザ発行をよろしくどうぞ」と願った結果であった。  もちろんニューイは泣いた。  悪魔姿に戻った挙句尻尾も翼もすべて巻きつけて感動で九蔵を絞め殺しそうだったニューイは重い。体重的にも。  その彼氏を抱きとめる九蔵の愛も、なかなかのものだろう。  それから澄央は澄央で〝遊戯に支障が出ない日はビルティがいつでも胡桃町へ遊びに来られる権利〟を申請した。  お断りしたとはいえ、一晩抱いた相手であり友人にカウントしているビルティの交際宣言にきちんと向き合ってやる気らしい。  感動する九蔵の隣でぼそっと「ビルティ料理できるス」と言っていたが、それは聞かなかったことにした。  おおむねこちらが本音である。  心から澄央は腹ペコガチ勢である。  こちらも温厚……というかビルティは主に澄央、ときどき九蔵とニューイにしか興味がないので人に危害は加えない。  あちこちうろついて悪さをしないように場所はご近所に限定して、澄央や九蔵に報連相をかかさない約束なら問題はないはず。悪魔王の扉パワーで人間に仮装もさせてくれればより安全だ。  ビルティはこれはもう実質交際済みなのでは? と言わんばかりに澄央に絡みついていたが、澄央は絞め殺されかけてはいなかった。くそう、九蔵は瀕死だと言うのに。  ニューイに愛されすぎて死にかけている九蔵は「付き合ったらお前さんも絞殺ですぜ」とテレパシーを送った。   閑話休題。  そんなわけで、ハッピーエンド。  ビザ問題を解決した九蔵とニューイと愉快な澄央に、新たな仲間が加わったメルヘンな一幕なのであった。 「いやハッピーエンドじゃねーんでござるが」 「ハッピーエンドハッピーエンド」 「ココ殿ォッ! 唯一の常識人である貴殿が拙者一個人的にも一エクソシスト的にもツッコミどころしかない現状をひきつった笑顔で雑に誤魔化さないでほしいでござるゥッ!」  某日・越後宅。  ちゃぶ台をバシバシ叩いて吠える越後に、九蔵は仏のような笑みを浮かべ「落ち着きなさい若人よ」と穏やかにハンズアップした。  しかしてんで落ち着かない越後はギャンギャンと泣きわめきながら、ちゃぶ台にガバッと突っ伏する。おのれは子どもか。  仕方のない後輩だが、今回ばかりは九蔵も頷ける案件だ。 「ビザの申請理由が〝恋人と人間生活中だからである〟の一点張りな悪魔らしからない悪魔にエクソシスト協会の審査部門がにわかにざわついていたというのに悪魔王から〝あ、もうそれ大丈夫なんで〟とばかりに特権行使された結果どういうことだお前のお隣さんだろバカ息子コノヤロウと父上に詰問された拙者の気持ちたるや悲鳴のこと断末魔ッ!!」  ここまで一息。 「その上予想以上にトカゲ男に懐かれたとかなんとかで部屋が手狭になったあの後輩イビリが趣味なナス殿がココ殿と同じアパートに引っ越してくるとはなにごとかッ!?」  そして一息。 「きゃつらが越してきた部屋は拙者のお隣ルームでござるぞォォォォォッッ!!」  もちろん一息。  現状は越後の言うとおりである。九蔵は仏スマイルでポンと越後の肩をたたき、冷たいココアでもてなした。気持ちはよくわかるとも。  悪魔退治という使命を抱いて都会に出てきたのに、のっけから先輩の恋人が悪魔で陽キャのイケメン。  そして後輩がマッチョ悪魔で、上司の恋人(仮)は美女悪魔。  挙げ句にお隣さんがバチバチの先輩かつ先輩を愛しすぎる謎のトカゲともなれば、越後のメダカメンタルは溺死してしかるべきなのである。南無三。成仏してくれ。 「というか普通に安住の我が家の両隣が|奉公《バイト》先の先輩という時点でもう結構な苦行でござろうがッ!」 「はいココアです」 「知っての通りこのアパートの壁は防音ではないのでござるよッ!? 独り身の部屋をリア充で囲むとは鬼畜の所業ッ! しかも全員男で候ッ!」 「はいお菓子もどうぞ」 「イケメン悪魔に美人トカゲと右も左も人外が集まりおってからに──お主らまとめて退魔してやろうかァァァァァッッ!!」 「はい昨晩余ったお惣菜おすそ分けしますね。ご飯炊いておきましたので晩ごはんにどうぞ」 「ええいであえであえーッ! このエクソシスト協会会長子息なのに未だ見習いエクソシストの大器晩成越後 明日夏様をきんぴらと唐揚げで懐柔できるとお思いかッ!」 「よかったらお味噌汁作りますが」 「玉ねぎと卵でお頼み申すゥッ!」 「ほらハッピーエンドハッピーエンド」   第八話 了

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