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男子会アフター。
逃がしてくれそうにない真顔と薄ら笑いの友人たちに捕まった九蔵は、かくかくしかじかとことの次第を洗いざらいゲロった。
本音を言うと、誰かに愚痴を言いたかったわけだ。
あらかた勢いで語り尽くした頃には、多少なりともスッキリしていた。
「キャラ被り乙」
「なんの話ですかナスくん」
「トカゲ脱皮するぜ」
「キャラ被りから皮被りに移行し脱皮と結論付ける不思議の思考回路はちょっと封印しておいてくださいビルティくん」
全てを聞き出しておいて真剣な様子で各々感想を言う友人たちに、九蔵はローテンションなツッコミを入れる。
なんだキャラ被りって。なんだ脱皮って。マイペースにもほどがあるだろう。もう少し脈絡を持ってくれ。
「脈絡ならあるスよ。まぁあの棗くんと生で会えるってところは羨まけしからんので触れないでおくとして、語尾がッスとか俺とかぶってるス」
「いやそれは仕事相手だから敬語だけど仲いいからちょっと崩した結果だろ?」
「あとその抜け目ない性格ってのが若干シオ店長っぽい気が……」
「どこ気にしてんだお前さんはっ」
「公爵夫人知らね。ナス被ってない。ナス剥けてる」
「お前さんは下ネタから離れなさい!」
九蔵がペシペシッ! とローテーブルをたたいて訴えると、二人はそろって「はーい」と大人しくなった。
この二人、揃うといつも以上に話がそれて進まない。
九蔵の周りには基本ツッコミ役が少ないのだ。今だけ猛烈にドゥレドを召喚したくなった九蔵である。
「んじゃ、本題に戻るスけど」
「逸らしたの自分だけどな」
「しゃーない。とりあえず棗くんに妬くってのは、ココさんが身動きとらないだけあってどうしようもない話スよね」
しみじみと頷く澄央に、九蔵はそうなんだよとため息を吐いた。
理論派な九蔵にあるまじき感情論。
思考回路で理屈をこねては持ち込んで納得しているものの、感情の部分が仕事に個人を持ち込もうとしてしまう。
だから線引きするだけで別に九蔵をイジメはしない凌馬を必要以上に意識してしまうのだ。
複雑な状況により難しい表情でむむっと腕組みをする九蔵と澄央。
すると二人を見つめていたビルティが、コテンと首を傾げた。
「アリス、なんでどうしようもない?」
「ん? そりゃ仕事に感情持ち込んじゃダメだからなぁ。俺も嫌がらせされてるわけもなく、ニューイも他の人も誰も嫌がってねーし……普通に話もするといえばするんだよ。お互い表面なであう感じだけどさ」
「だから? 問題ない思う」
「お、ぉー……問題ないからなんも言えないっていう問題なんですよ」
「ない。問題ない」
キパッと言い切るビルティに、九蔵は頬を引きつらせてタラタラと冷や汗を流した。そこは図星というウィークポイントだぞ。
これ以上突っ込まないでくれと視線で訴えるが、ニヒルな笑顔の美人なイケメントカゲは、チロと舌を出す。
目をそらした九蔵の負けだ。
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