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「リョーマ恋敵違う。黒ウサギアリス大好き。思うところない。黒ウサギアリスのモノ。問題どこ?」
「えーっと問題は、その、あれがですね……」
「オレあれ知らない。アリスいじめられるない言った。シカトしない。話する。リョーマ問題ない」
「あ、あ~……ん〜………」
「リョーマだけ黒ウサギ仲良くダメおかしい。アリス、かっこつけるしなくてもかっこいいぜ? バカ」
人間とは違う価値観を持つビルティの素直な言葉に、九蔵は滝汗のごとく冷や汗を流して赤と青の混じった顔色に染まった。
そうだ。その通りだ。
かっこつけているから、どれほど説明したところでなにも悪くない凌馬が気がかりな理由が一見しっくりこない愚痴になる。
だが九蔵はそれを言いたくなかった。
シリアス的な理由ではなく、男のプライド的な理由で。
毎度バカバカしい話ではあるが、イケメンに憧れるシャイな九蔵はこう見えて、ド級のかっこつけなのである。
「リョーマだけ嫌なんで?」
「ノ、ノーコメント」
「口あるのに。アリスワガママ」
「うぐっ」
「オレワガママ好きだぜ。けど言い方いくない。我慢強いアリス。嫌態度に出る。とても嫌。じゃ、一大事。どっちかに言うする」
「ぐはっ」
「イチオシは絞め殺す。一番簡単だ」
「ばっちゃんの名にかけられる!」
ドストレートに図星へ正論のワンツーパンチを食らった九蔵は、よろよろと死にかけのメンタルでツッコミを入れた。
あけすけに言えばいい。
わかっていることを言われると、ぐうの音出ず九蔵は瀕死だ。
助けてくれ! とテレパシーを飛ばしてみると、澄央はそっと合掌する。
どうやらそもそもビルティの思考と言葉がわからない澄央は、九蔵を見捨てることにしたらしい。──この薄情者め!
「南無ココさん……」
「いい? アリスうっかりした。教えるよ。ほら、オレとナスも黒ウサギ大好き。仲いい。同盟。リョーマだけ嫌おかしい。な?」
「はい」
「で、トカゲ獲物独占する。独占いいこと。もう決まってるから。獲物なにしててもオレのモノ。ナスどこ行ってもオレのモノ。死んでもオレのモノ。誰に色目使ってもオレのモノ。よっしゃー」
「え? いやそこよっしゃーだと俺逃げられねんスけど……あれなんか雲行きおかしくねぇスか?」
「そうですね」
「そうですねじゃなくてココさん」
「中途半端いくない。仕事? はどうでもいい。けど、ヤキモチ持ち込むは黒ウサギに言うべき。か、リョーマに投げるべき。ハグ背骨折れるよ?」
「おっしゃる通り」
「ココさん聞いてココさん」
「んじゃ、ヤキモチ焼かない。いっぱいはマズイ。ヤキモチ好きはハートの女王と白ウサギだけだぜ。普通、嫉妬の欲望は添えるだけ。あとはゴミ箱ダンクシュート」
「スリーポイント試合終了ッ!」
「いやこれもしかして俺の交際歴もトカゲで終了フラグじゃないスかちょっとッ!」
「クックックッ」
「困惑の俺」
まったくこんな簡単なことも忘れるなんてうっかりさんだなーとばかりに語られ、九蔵はやけくそ気味に拳を突き上げた。
九蔵を見捨てた澄央はさりげなく獲物認定され心做しか眉を八の字に垂れさせて九蔵を見つめるが、隣のビルティは機嫌よく喉を鳴らす。試合終了。
マブダチらしく痛み分けだ。
ビルティをフるなら本気を出すか悪魔王に相談するしかない。骨は拾ってやろう。
──と、まぁそんなわけで。
愚痴を言ってスッキリした代わりに図星をぶん殴られてやけっぱちな九蔵と、フレンドリィファイヤーによりこんがり焼かれた澄央。そして言いたい放題自由にやりきったご機嫌ビルティの男子会アフターは、死なば諸共過ぎていくのであった。
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