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 そんな気分でニマニマと笑みを浮かべながら反応を待つ九蔵に、ニューイは頭が痛いような顔で赤らんだ頬をポリ、とかいた。 「そうさ。私はこの世の全てのすーぱーだーりんが羨ましい。嫉妬している」 「ん……はっ……」 「妬んで、威嚇して、そうなりたいと負けん気を燃やしていた。なぜ九蔵の好きなものがそんなパーフェクト王子様なのだろう? と何度僻んだか知れないよ」  モニョモニョと尖った唇をふにゃらせて語るニューイ。  その手が九蔵のふとももをなで、語りながら軽くゆすられる。 「キミもリョーマも簡単にあり得ないと言うが、私はキミがリョーマに惚れてしまったに違いない! と心から思っていた。私はそのくらい情けない最悪信者な男で……恋敵に直談判してオロオロ相談するようなパニック悪魔でもある」  ニューイがモニョモニョ語る。  きっと誰も、悪魔でも、恋に自信なんかないのだと。  どれだけ自分に自信があろうが、好きな人が終わりまでずっと自分を愛し続けてくれるだろうと、高をくくって信じ続けることはできない。 「私はきっと一生キミを疑い続けるよ」 「一生?」 「うむ。私の一生」 「永いなぁ」 「そうとも。キミが生きているなら、キミの視線の届く範囲に自分より素敵な者がいる限り私は毎日、あぁいつか九蔵は私より好きな人を見つけてしまうのだ! と妄想や幻想と本気のバトルをする」 「うーん……毎日バトルは大変だと思いますけどね……」 「おっと止めないでおくれよ? 止められないのだからそのおねだりは聞いてあげられない。ダメダメさ。今の九蔵がなんと言おうが、ふと目を閉じた時〝誰より明日の九蔵に好かれたい!〟と隣のキミを差し置いて未来に夢見てしまうのが私なのだ」  ノンノンと首を横に振るニューイは、至極真剣な表情で「これがキミの知りたがったサイド私の物語である」と締めた。  さり気なく九蔵の肌に手をそわせて話を逸らそうといじける手が面白い。  もういいだろう? という声が聞こえる。さっさと抱きたいらしい。わかりやすい彼氏様だ。  九蔵がニヒ、と笑って片眉を上げると、途端にニューイは深く自身を埋めると同時に、身を乗り出して九蔵の唇にキスをした。  チュ、とリップ音が鳴る。  照れくさいのもあり、頬をすり合わせてじゃれつくような動きで抱き合う。 「ふ、あ……っ、ぅ」 「まったく、九蔵……キミは私にダメなところを晒させて、プライドを粉砕されることに慣れさせようとしているだろう」 「あ、っは、や、別に?」 「いーや、キミと出会ってもう一年だ。キミは自分は言いたがらないくせに人のダメを許して、ほら大丈夫ボクは全部許すからずっと一緒にいてね? と考えている」 「うっ……!」 「そんな九蔵の願いを叶えるのが、私の思う〝九蔵と笑って暮らせる距離〟だからね」  波間のようにヌルヌルと突き上げながら言われたセリフに、打って変わって九蔵の頬がブワッと紅葉した。  出会った頃。  初めてケンカをした時、仲直りをしようと言ったニューイの言葉だ。  それを忘れずに掴んだぞというアピールをさらりとされると、ニューイを可愛がる気だった九蔵のほうが勢いをそがれてしまう。……くそう、悔しい。報復だ。 「まぁ、うん。そうですね。……俺さんも〝ニューイさんといると幸福だ〟って毎日思ってるし、ニューイさんがもう世界一好きな男ですよ」 「ふむっ……!?」  ニューイにだけは好きの量で負けたくないカッコつけの九蔵の反撃に、今度はニューイが悲鳴を上げて耳まで赤くなった。

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