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第3話 ∥

「おいっ何をボサッとしている!呼ばれたら返事をしろ!」 ディラントの父親らしき青年がそう叫びながら近付いてきて俺の胸ぐらを掴もうとしてきた。 完全に条件反射だった。 俺は胸ぐらを掴もうと伸ばされた青年の手を掴んで投げ飛ばした。 突然投げ飛ばされた青年は当然受け身を取れず、勢いよく床に倒れた。 打ち所が悪かったのか、青年は気を失っていた。 しまった、やり過ぎたか? そう思って俺は青年の様子を見た。 首筋に指を当てて脈を確認して、青年の体をチェックする。 ………脈は正常、骨折も無さそうだ。 恐らく、体を打ち付けた事による脳震盪。 1、2時間もしたら目を覚ますだろう。 俺は青年に大きな怪我がなくて一安心した。 それよりもこれからどうするかだ。 何がどうなってるのか、さっぱり分からない。 でもここに居るわけにはいかない。 そう思って、俺は小屋を出た。 外に出ると同じような小屋が並んでいた。 俺はしばらく道なりに歩いた。 どれくらい歩いたのか、息が上がって足が動かなくなってくる。 俺は建物の壁に凭れて少し休憩した。 体力も筋力もない弱い体。 さっきあの男を投げた時もそうだった。 本当はあそこまでひどくするつもりは無かった。 条件反射とはいえ、相手は素人だ。 ちゃんと手加減出来たのに、体が上手く動かせなかった。 "俺の体"とは全く違う、思い通りに動かない体。 俺はグッと唇を噛んだ。 考えてても仕方ない。 ここがどこなのか、俺に何が起きてるのか確かめる必要がある。 その為には、話の分かる人に会わなきゃいけない。 そう思って俺は気を取り直して、また歩き出した。 ようやく小屋が建ち並んでいる区域を抜けたところで、俺は力尽きてしまった。 その場に倒れ込んで動けない。 ………しまった、この少年は日常的に暴力を受けていた。 恐らくご飯もまともに食べてないんだろう。 ………完全に失念していたな。 段々と意識が薄れていく。 人が目の前を通り過ぎていくけど、この少年を気に止める人なんていない。 それもそうだ、こんな汚れている子供を気に止めようなんて誰も思わないだろう。 誰も面倒事には関わりたくない、それが当たり前だ。 ………俺、このまま死ぬのか…… そう思っていると、目の前に人影が見えた。 何かを話し掛けられてる気がするけど分からない。 俺はそのまま意識を手放した。

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