5 / 230

第4話 ゲームの世界

目を覚ますと、そこはまた知らない場所だった。 俺が居た掘っ立て小屋とは違って、豪華な部屋。 明らかに高額であろう装飾が施された家具、天井にはシャンデリア、俺が今寝てるベッドはキングサイズで天蓋までついている。 俺はキョロキョロと部屋の中を見回した。 ………こんな感じの部屋、テレビで見たことあるなぁ。 確か海外の富豪の部屋がこんな感じだった。 そんな事を考えているとカチャっと扉が開いた。 その音に思わず体が跳ねる。 見るとメイド服を着た女の人が立っていた。 「気が付かれましたか。ご気分はいかがですか?」 女の人は持っていた水のはいった洗面器をサイドテーブルに置きながら言う。 「……大丈夫です。あの……ここは?」 「ここはグロウ家の屋敷です。あなたは3日前に街で倒れているところをお嬢様に助けられたのですよ」 3日前……俺はそんなに眠っていたのか。 それにグロウ家って……お嬢様って誰だ? グロウ……何だろう、どこかで…… そう考えた瞬間、ズキンと頭痛がした。 俺は頭を押さえて踞る。 「どうされたのですか!?」 突然踞った俺に女の人が手を差し伸べる。 俺はそれに答えることが出来なかった。 ……何だ、頭に何か映像が浮かんでくる。 これは……"俺"の記憶? 次の瞬間またカチャと音がして、その音が耳に入ると頭に浮かんでた映像も頭痛も消えていた。 扉の方を見ると、今度は女の子が立っていた。 「良かった、気付かれたのですね」 そう言って女の子は微笑む。 見た目はディラントより少し年上。 フワッと少しウェーブのかかったブロンドの髪、ラベンダー色の瞳。 俺はこの少女に見覚えがあった。 「…………シャロウネ・グロウ?」 『シャロウネ・グロウ』 そう口に出した途端、俺はハッとした。 そんな事は有り得ない。 だって『シャロウネ・グロウ』は………… 俺は少女を見る。 目が合うと、少女はニコッと微笑んだ。 「気分はいかがですか?」 「……大丈夫です」 そう言うと、少女はまた微笑む。 「申し遅れました。私(わたくし)はシャロウネ・グロウと申します」 少女は名を告げると、スカートを広げて少し足を折る。 少女は確かに『シャロウネ・グロウ』と名乗った。 信じられなかった。だってシャロウネ・グロウは妹がハマってた乙女ゲームの登場人物。 そんな事有り得ないと思った。 その瞬間、また頭痛がする。 俺は咄嗟に頭を押さえた。 近付いてくる強い光。 誰かが叫ぶ声。 これは…… 「……ですか!?」 ふと頬に何か触れる感触がして俺は顔を上げた。 目に飛び込んで来たのはシャロウネの心配そうな表情。 「大丈夫ですか?」 そう言ってシャロウネは俺を覗き込む。 「……大丈夫、です」 思い出した。 俺はあの時、トラックに跳ねられた。 ………妹の目の前で。

ともだちにシェアしよう!