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第10話 ディラント・グロウ

『……ちゃん』 ……誰かの呼ぶ声。 真っ暗の中、一ヶ所だけポッと光が見える。 その光の中に人影が見えた。 『……ぃちゃん』 ……誰だ? 光の中の人影が段々はっきりと見えてくる。 『お兄ちゃん!』 光の中の人はそう叫んで手を伸ばす。 『友華!』 俺も答えるように手を伸ばした。 でも友華まであと少し届かない。 必死に手を伸ばしても、友華はどんどん離れていく。 『友華!』 俺は必死に走った。 でも追い付かない。 『待ってくれ、友華!』 遠ざかっていく友華の姿がフッと消えた。 次の瞬間、強い光が俺目掛けて向かってきた。 俺はバッと目を開けた。 嫌な汗が吹き出て、呼吸が乱れる。 心臓がドッドッと脈打っている。 周りを見てみると、豪華な家具の置いてある部屋の大きなベッドに寝ていた。 ………夢…? 「……っ」 俺は体を起こすと、夢の内容を思い出して唇を噛んだ。 ベッドから出ると、部屋にある姿見の前に立った。 鏡に映るのはディラントの姿。 俺は鏡に映るディラントに手を伸ばした。 「………こっちが夢なら良かったのに…」

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