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第11話 ∥

「おはようございます」 朝、リーナさんが俺の支度を手伝うために部屋に来た。 「…………おはようございます」 結局、あの後は眠れなかった。 寝たらまたあの夢を見るんじゃないかと怖かった。 「……さま」 友華の夢を見ると、思い知らされる。 ここはもう、"俺"が居た世界じゃない。 「ディラント様!!」 リーナさんに呼ばれてハッとした。 リーナさんを見ると、心配そう覗き込んでいる。 「……ぁ…」 「ディラント様、どうされましたか?ご気分がすぐれませんか?」 『ディラント』 今の俺の名前…… 「……いえ、大丈夫です」 「………そうですか。何かあれば遠慮なく言ってください」 「……ありがとうございます」 支度が終わる頃、シャロウネが部屋に来た。 食堂まで俺の手を引いて、時折屈託のない笑顔を見せる。 その姿が友華の小さい頃と被った。 もう分かっている。 元の世界には戻れない。 二度と友華には会えない。 ………俺は、今後どうしたら良いんだろう。 食堂に入ると伯爵様も居た。 伯爵様は俺たちに気付くと、わざわざ立ち上がって近付いてくる。 俺たちの前に立つと、スッと膝をついて俺たちの目線までしゃがんだ。 「おはよう、シャーネ、ディラント」 そう言って微笑む。 シャロウネと同じ金に近いブロンドとラベンダー色の瞳がキラキラして、男の俺でもこの人を綺麗だと思う。 「おはようございます、お父様」 そう言ってシャロウネが頭を下げる。 「……おはようございます」 俺もそれに習って頭を下げた。 そんな俺たちに、伯爵様は軽く頷いた。 「ディラントはよく眠れたかな?」 そう言って伯爵様は俺の頬に触れた。 「…………はい」 本当は眠れてないけど、伯爵様に心配を掛けるわけにはいかない。 そう思って、俺は頷いた。 「…そうか」 そう言うと、伯爵様は一瞬悲しそうな表情を見せた。 でも次の瞬間には普通になってて、俺は気のせいかと思った。 「さぁ朝食にしよう」 そう言って伯爵様が手を叩くと、メイドたちが次々と料理を運んできた。 「そうだディラント、シャーネ、この後私の書斎に来てくれるかい。大事な話があるんだ」 朝食を食べていると、伯爵様がそう言う。 その言葉に、俺とシャロウネは顔を見合わせた。

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