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第16話 風峰 郁十

俺にとっての家族は妹の友華だけだった。 俺が16歳の頃、両親が事故で死んだ。 友華は6歳で、俺たちはその後親戚の家に引き取られた。 親戚が俺たちを引き取ったのは世間体と遺産が目当てだった。 俺の父は大きくは無いけど、事業を立ち上げていた。 母も料理家として名を馳せていた。 両親が事故で死んだ事で、その遺産が俺たちに舞い込んできた。 その事を知ると、親戚の人たちは目の色を変えて俺たちに依ってきた。 親戚の考えてることは手に取るように分かった。 案の定、親戚は俺たちを引き取りたいと言ってきた。 本当は断るつもりはだった。 でも16歳のガキが幼い妹を連れて二人だけで生活出来るわけもなく、俺たちは親戚を頼らざるおえなかった。 親戚の家に行くと、両親の遺産は『管理』という名目で親戚に取られた。 家でも俺たちの居場所は無かった。 部屋は二人で一部屋、食事もその部屋で親戚の作った質素なもの。 風呂とかも一番最後、皆が寝静まってからあまり音を発てないように入っていた。 俺はその頃からバイトを始めた。 友華をあまり一人には出来ないから、部活を止めて、その時間をバイトに当てた。 バイトも長時間出来ないから給料は微々たるものだったけど、給料日には友華を連れてファミレスで好きなものを食べた。 その後は親戚にやっかまれたりしたけど、気にはしなかった。 寝る時も友華と一緒で、寝る前に必ずこれからの事を二人で話した。 あーしたい、こうしたいと友華の口からはやりたいことが沢山出てくる。 俺はその時間が好きだった。 誰にも邪魔されない二人だけの時間。 でもその時間もそう長くは続かなかった。 俺が20歳で友華が10歳になる頃、俺は就職して働いていた。 その頃から友華の口からは『どうしてこんな』とか『もう嫌だ』とか、そういう言葉が増え始めた。 俺が就職したことで仕事で帰りが遅くなり、友華との時間があまり取れなくなった事が原因だった。 俺が居ない間、友華があの人たちの標的になっていた。 段々と病んでいく友華に、もう限界だと思った。 俺は今までコツコツと貯めてた貯金を使って、友華を連れて親戚の家を出た。 友華と二人、助け合ってきた。 生活は苦しかったけど、またあの時みたいに二人で未来を語り合うのは楽しかった。 その時俺は、それがずっと続くと思っていたんだ。

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