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第23話 ∥
(シリウスside)
ディラントの事が落ち着いて、私は手付かずだった仕事に戻った。
「旦那様、次はこれを…………」
そう言ってアランが次の書類を渡そうとして、ピタッと動きを止めた。
アランはじっと扉を見つめている。
「アラン?どうかしたのかい?」
そう聞くと、アランは無言で扉の近付いた。
アランはスラム出身ってこともあって、人の気配には敏感だった。
扉の前に誰かが立つと、ノックをする前に開けていた。
今回も多分誰かが来たのだろう。
アランの様子を見ていると、扉の外を確認したアランが何も言わずに扉を全開にする。
その先にはシャーネが立っていた。
扉の前に立っていたシャーネと目が合うと、その瞬間シャーネの目からポロポロと涙が流れ落ちた。
「シャーネ!?」
私は突然泣き出したシャーネに駆け寄った。
「どうしたんだい?何があった?」
そう言って私はシャーネを抱き締める。
「………ディーが…」
涙を流して小さな声でディラントの名前を口にするシャーネに、ディラントに何かあったのかと一瞬不安になる。
「ディラントがどうかしたのか?」
「……ディーが泣くんです…」
「え?」
「……とても悲しそうに……涙を流して…」
『私はどうしたら…』とシャーネは泣く。
「私……ディーの悲しんでる姿は、見たくないです」
「……そうだね、ディラントの悲しんでる姿は私も見たくないよ。だからディラントと話をするつもりだよ」
「……お話?」
「そう。ディラントとちゃんと家族になるために、ディラントに認めてもらえるようにちゃんと話をして、ディラントの話も聞くつもりだよ」
そう言いながら私はシャーネの涙を指で拭う。
「……そうすればディーは悲しくなくなる……?」
「……そうなれば良いね」
それはディラント次第。
ディラントの悲しみがどこから来るのか、何か原因なのかは私も分からない。
私にそれが取り除けるのかも分からない。
でもそれを少しでも和らげてあげたい。
「さぁ、もう遅いからシャーネは休みなさい」
そう言うと、シャーネが少しモジモジとし始める。
「シャーネ、どうしたんだい?」
「……あ、あの……今日は、ディーの所に居ても、良いですか?」
シャーネは躊躇いがちに言う。
「そうだね、シャーネはディラントに着いててあげなさい」
私がそう言うと、シャーネはパァと顔を綻ばせた。
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