31 / 225
第30話 ∥
(シリウスside)
夜、ディラントの体調が悪化したと連絡を受けた。
私は急いでディラントの部屋に向かった。
ディラントの部屋に着くと、部屋の前にはメイドが居た。
「旦那様」
私に気付いたメイドが駆け寄って頭を下げる。
「ディラントの様子は?」
「只今お医者様に診て頂いています」
そう言ってメイドは部屋の扉に視線を向ける。
私とメイドは医師の診察が終わるまで部屋の前で待つことにした。
しばらくするとリーナと医師が部屋から出てきた。
医師は私と目が合うと頭を下げた。
「ディラントの様子は?」
「…ストレスだと思います」
「ストレス?」
「はい。今回の体調悪化の原因はストレスによるものです」
「……ディラントに会えるか?」
「今は眠っておられるので……顔を見るくらいなら」
医師の了解を得て、私はディラントの部屋に入った。
キングサイズのベッドに、小さい体が横たわっている。
私はディラントのすぐ横に腰掛けると、ディラントの頬にそっと触れた。
触れた所からディラントの体温が伝わってくる。
……熱いな。
こんな小さな体で……ディラントは一体何を溜め込んでいるのだろう。
そう思いながらディラントの頬を撫でていると、ディラントがその手にすり寄ってきた。
『~~~~』
よく聞き取れなかったが、ディラントは何かを呟いて涙を流す。
「ディラント?」
ディラントからの反応は無く、眠っているみたいだ。
『~~~~』
ディラントはまた何を呟いて私の手を掴む。
すがるように私の手を掴み涙を流すディラントの頭を、そっと空いている方の手で撫でた。
「…大丈夫、何も心配する事は無い。何も気にせず、今はゆっくりお休み」
伝わったのかは分からない。
でも私がそう言うと、ディラントの表情が少し和らいだ気がした。
ともだちにシェアしよう!