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第31話 ∥
夢を見た。
それは懐かしくて、優しい夢。
両親が居て、友華が居て、皆笑っているすごく幸せな夢。
俺は客観的に3人を見ていた。
3人が笑い合う中に俺は居ない。
それでも良かった。
3人を眺めていると、ふと父さんと目が合った。
夢なのだから目が合ったからといって、リアクションを返してくれるとは思ってなかった。
でも夢の中の父さんはフッと微笑むと俺の方に近付いてきた。
父さんは俺の目の前に立つと、そっと頬に触れた。
その手はとても温かくて、涙が出た。
『……父さん』
父さんは呼んでも答えてはくれない。
ただ優しく微笑むだけ。
でもそれでも良かった。
『会いたかった』
俺は頬に添えられてる父さんの手にすり寄った。
・・・・・・・・・・
ふと目を開けると、とても温かい気持ちになった。
それは皆の夢を見たから。
皆笑ってた。
父さんも母さんも、友華も……
皆の笑顔がまた見られて、俺は嬉しかった。
そんな事を考えながらふと横を見ると、椅子に座って眠っている伯爵様に気付いた。
「………伯爵様?」
無意識に呟くと、伯爵様の目がふと開いて思わず体が揺れた。
伯爵様のラベンダー色の瞳が俺を捉えた。
椅子から立ち上がった伯爵様が無言で近付いてきた。
俺の前に立った伯爵様が、俺に向けて手を伸ばす。
俺は思わず目を瞑って体を強張らせる。
その手に身構えていると頭にポンと置かれて、俺は驚いて伯爵様を見上げた。
伯爵様と目が合うと、伯爵様はにっこりと微笑んだ。
「気分はどうだい?」
そう聞かれて、一緒何の事か分からなくなる。
………そういえば俺、また倒れて
「……あ、大丈夫…です」
「……そうか」
そう言うと、伯爵様は少し寂しそうに笑った。
……なんでそんな顔をするんだろう。
俺が何か、気にさわるような事をしてしまったんだろうか。
「……ディラント、少し私と話をしようか」
そう言って、伯爵様は真剣な表情で俺を見た。
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