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第34話 ∥
(シリウスside)
しばらく泣き続けたディラントは、泣き疲れて眠ってしまった。
私はディラントをベッドに寝かせると、眠るディラントの頭を撫でた。
ディラントを初めて見たとき、悲しみが宿る瞳が気になった。
ディラントが何を抱えているのかは分からない。
何があったら、こんな幼い子供があんな悲しい瞳をするのだろうか。
これは私の自己満足。
それでもこの子の悲しみを少しでも減らしてあげたいと思った。
シャーネも無意識にディラントの悲しみを読み取ったのかもしれない。
だからあれほどディラントに固執したのだろう。
私は眠るディラントの顔を見る。
どことなく表情が穏やかになった気がする。
泣いた事で少し気が晴れたのかもしれない。
ディラントは人に頼ること、感情を表に出すことが苦手らしい。
一人で抱え込んで、その内に負の気持ちを溜め込んでしまう。
でも願わくば、この先ディラントの悲しみが少しでも無くなれば良い。
そう思って、私はディラントの頭を撫でた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ディラントside)
目を開けると、見慣れた天井が目に入ってくる。
………そうか俺、寝ちゃったのか。
そう思いながら体を起こすと、視界の端に人影が映る。
見ると、伯爵様が椅子に座ったまま寝ていた。
………なんで伯爵様がここに……………
そう考えると、ふと夜の事を思い出した。
その瞬間、顔が熱くなるのが分かった。
そうだ俺、伯爵様の前でボロ泣きしたんだった!
うわっヤバい、すごく恥ずかしい!
おまけに泣き疲れて寝ちゃうなんて!
そう思って、俺は頭を抱えた。
………でも、何かスッキリしてる気がする。
俺がディラントだってことは、多分この先も受け入れる事は出来ないと思う。
それでもほんの少しだけ、それでもいいやと思える。
俺は椅子で眠る伯爵様を見た。
………伯爵様のお陰、かな。
そう思ったら、自然と笑みが溢れた。
ちょっとだけ伯爵様を見てると、ふと伯爵様の目が開いた。
目が合うと、思わず体が揺れた。
「おはよう、ディラント」
そう言って伯爵様が優しく微笑む。
「……おはよう、ございます」
俺は気恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
そうすると、伯爵様からクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「気分は良さそうだね」
そう言って伯爵様は俺の頭に手を置いた。
「起きられそうなら、一緒に朝食を食べよう」
伯爵様はそう言うと、また優しく微笑んで俺の頭を撫でた。
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