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第36話 ∥

朝食を食べた後、俺はまた部屋に戻された。 体調が良くなったとはいえ、まだ本調子じゃからと絶対安静を言い渡された。 二回も倒れてしまった俺には反論が出来ず、素直に従うことにした。 「リーナさん、本が読みたいので書庫室に行っても良いですか?」 部屋に戻ってベッドに入ったは良いけどやることがなくて暇なった俺は、リーナさんに書庫室に行って良いか聞いてみた。 書庫室に本を取りに行くくらいなら…… 「駄目です。ディラント様は絶対安静なのですから」 リーナさんにそう言ってスパッと切られた。 「で、でも…本を取りに行くくらいなら……」 「駄目です。ディラント様は本を読み始めると集中してしまってお休みにならないではありませんか」 そう言われて、身に覚えのある俺は何も言えなかった。 午後になると、先生が定期検診にやって来た。 「ご気分は如何ですか?」 そう言いながら先生は俺の首筋に触れる。 「大丈夫です。大分良くなりました」 俺がそう答えると、先生が小さく頷く。 「顔色も良いですし、この分でしたら数日で回復なさるでしょう」 それを聞いて、俺はホッと息を吐いた。 「ありがとうございます」 そう言って軽く頭を下げると、そんな俺を先生がじっと見てきた。 「……吹っ切れたみたいですね」 そう言う先生に、意味が分からなかった俺は首を傾げた。 そんな俺を見て、先生がクスクスと笑う。 「前までは何か思い詰めているような感じがしましたが、今はどこかスッキリしているように見えます」 そう言われて、何となく理解した。 「……そうかもしれません。今までは伯爵様に認められるように気を張っていたので……」 伯爵様と話してから、気を張る必要がないと分かった。 それが分かった瞬間、すごく気持ちが軽くなった。 「『お父様』とお呼びにならないのですか?」 そう言われて、俺は顔が熱くなった。 「………それはまだ」 そう言って俯くと、先生はクスクスと笑った。 結局、何もしないまま夜になった。 何もしないというより、何もさせて貰えなかった。 常にリーナさんが部屋に居て、リーナさんが居ない時は他のメイドが居た。 夜になって誰も居なくなって、俺は息を吐いた。 これが続いたら確実に体が鈍るな。 そう考えた瞬間、俺はふとあることを思い出した。 そういえば、今は俺一人なんだよな。 俺は起き上がると、部屋を見回した。 当然、誰も居ない。 俺はストレッチくらいならと思って、ベッドから降りた。 その瞬間扉がノックされて、思わず体が跳ねた。 ……こんな時間に誰だ? そう思って様子を伺っていると、もう一度扉がノックされた。 『…ディー、起きてますか?』 そう声がする。 シャロウネ? 扉を開けるとシャロウネが立っていて、目が合った瞬間シャロウネがパァと笑った。 「どうしたんですか、こんな時間に」 そう聞くと、シャロウネはなぜかモジモジし始める。 「……えと……あの…」 俺は何となく、シャロウネが来た理由を察した。 「一緒に寝ますか?」 そう言って手を差し出すと、シャロウネは笑って俺の手を取った。 「はい!」 俺は隣で眠るシャロウネを眺めていた。 友華もこれくらいの時、よく俺の所に来てたな。 一緒に寝たいのに言えなくてモジモジするところとかは友華と一緒だ。 そう思うと自然と笑みが溢れた。 シャロウネに見つけて貰わなかったら俺は野垂れ死んでた。 シャロウネには感謝しかない。 姉…とは思えないけど、俺の新たな家族。 「………ありがとう」

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