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第39話 ∥

早速、次の日から俺のダンスの猛特訓が始まった。 ダンスは伯爵様が手配してくれた先生が教えてくれる。 まずは基本姿勢から。 背筋を伸ばし、手を定位置にホールドさせる。 この姿勢を保ちながらステップを踏まなきゃならない。 先生が手拍子でリズムを刻む。 俺はそのリズムに合わせてひたすらステップの練習をした。 ……………もう無理…足が動かない。 数時間ひたすらステップを踏み続けた俺は、完全に力尽きて座り込んでしまった。 「今日はここまでですね」 先生がそう言う。 「………ありがとう、ございます」 「……誰か呼んできましょう」 動けない俺を見かねた先生が苦笑混じりに笑って部屋を出ていった。 社交界のダンスってゆったりしてるイメージだから、もっと楽だと思たのにとんでもなかった…… これなら武術の練習の方が幾分かマシかもしれない。これが半年も続くのか。 そう思うと落胆しか無かった。 しばらくすると先生が戻ってきた。 その後ろからアランが着いてくる。 アラン・リード イノラバの攻略対象の一人。 イノラバで唯一、学園以外でのイベントが発生するキャラだ。 年齢は確かヒロインの5つ上だったか。 ということは、今は15歳。 俺がここに来たときはまだあどけなさが残ってたけど、2年経ってかなり大人びてきていた。 「随分と酷使されたみたいですね」 そう言って座り込んでる俺にアランが近寄って来る。 俺はそれに対して笑うしかなかった。 アランが『失礼します』と言って俺を抱えた。 動けないから運んでくれるのは有難い。 有難いけどこれは……… 「……あの、もう少し抱え方をなんとか出来ませんか?」 俺は呟くようにアランに訴える。 「何か不都合でも?」 「……そういう訳じゃないですけど、これはちょっと……」 アランに抱えて貰うのはまだ良い。 でもアランの抱え方が横抱きなのが問題だった。 見た目は子供なんだから問題は無い。 無いけど、精神年齢がアランより上の俺がお姫様抱っこなんて恥ずかしすぎる! そう思って俺は、顔を両手で覆った。 「不都合でなければこのまま運びますね」 そう言ってアランはクスクスと笑う。 そういえば、アランは人をからかうのが好きって設定があった。 これは絶対俺の反応を見て楽しんでる。 「もう歩けるので下ろしてください!」 そう言って抵抗すると、アランが俺を抱える腕に力を入れた。 「暴れると落ちますよ」 「下ろしてください!」 そう言って俺は離れようとアランの体を押す。 その瞬間、アランに抱え込まれた。 抱き締められる感じになって、アランの顔が俺の顔の真横にくる。 「良い子だから大人しくしていろ」 そう耳元で囁かれて、俺はカッと顔が熱くなった。 普段は丁寧に話すのに、こんな状態でその話し方はズルい! 俺はそのギャップの衝撃に、完全に抵抗する気力を奪われた。

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