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第42話 ∥
王宮までは馬車で行く。
俺は馬車に乗るためにシャロウネに手を差し伸べた。
シャロウネはニコッと笑って俺の手を取った。
馬車の中で、伯爵様に王宮に着いてからの段取りの説明を受ける。
王宮に着いたら会場であるホールまで行く。
ホールの扉の前で呼ばれるまで待機。
伯爵様、シャロウネ、ディラントの順に名前が呼ばれる。
名前を呼ばれたら挨拶をして入場する。
これが王宮に着いてから入場までの流れだ。
正直、結構面倒くさい。
その後はしばらく自由にしてて良いらしい。
でも順番が来たら伯爵様と一緒に国王様に挨拶をしなければいけない。
俺はこれに一番緊張していた。
しばらく走ると、馬車が王宮に到着する。
馬車が止まると、従者によって馬車の扉が開かれた。
伯爵様が先に降りる。
俺も一回深呼吸をして伯爵様に続いた。
その後に降りてくるシャロウネに手を差し伸べた。
シャロウネが馬車を降りると、今度は肘を差し出す。
シャロウネは差し出した俺の肘に手を添えた。
「さぁ二人とも、準備は良いかい?」
伯爵様がそう言う。
俺とシャロウネは一度顔を見合わせると、伯爵様に向き直って同時に頷いた。
ホールの扉の前に立つと、従者が扉を開けて名前を呼び上げる。
名前が呼ばれると、一気に視線が集まった。
俺は一瞬、その視線に怯んでしまった。
後退ろうとすると、軽く腕が引かれた。
『大丈夫、私が居ますわ』
そうシャロウネが耳打ちする。
俺はホッと息を吐いた。
入場すると、まずは伯爵様と一緒に他の貴族に挨拶をする。
もう何人に挨拶したのかも、誰が誰かも覚えられない。
俺は、生前の会社の挨拶回りを思い出した。
「……疲れました」
漸く挨拶回りから解放されてしばらく自由にして良いと言われて、俺とシャロウネはホールの隅の方でドリンクを飲んでいた。
「こういうのも慣れですわ」
そうシャロウネが言う。
「シャーネも初めてですよね?」
「私は以前から小さなお茶会には出席していたの。対応は慣れてます」
「………ズルい」
そう言うと、シャロウネはクスクスと笑った。
「それにしても、ディーはすごく注目を集めていますわね」
シャロウネが周り見てそう言う。
「え?」
「恐らく、あちらの話題はディーですよ」
そう言ってシャロウネが小さく他の令嬢が集まってる場所を指す。
「俺なんかが話題に上がる訳ないですよ」
そう言って笑うと、シャロウネは呆れた顔をした。
「ディーは自分の事を理解していないようですわね」
そう言うシャロウネに、俺は意味が分からなくて首を傾げた。
シャロウネが小さくため息をつく。
「ディー、ここで少し待っていて貰えますか?」
そう言うシャロウネに俺が頷くと、シャロウネは俺から離れていった。
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