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第45話 ∥
(リオネスside)
衝撃だった。
今まで僕に意見する者なんて居なかった。
いつも通り、ちょっとふざけてただけだった。
いきなり突き飛ばされたかと思ったら、相手は僕と同じ…いや僕より小さい子供だった。
見上げた先の冷たく突き刺さるような視線に、僕は射抜かれた。
その後、『死』を語る彼の瞳は悲しみに染まっていた。
さっきまでの冷たく突き刺さすような視線が嘘のようだった。
「……さっきのは誰だ?」
僕は彼が居なくなると、無意識にそう呟いた。
「ディラント・グロウ、グロウ伯爵家のご令息です」
近くに居た侍従が答える。
「……ディラント・グロウ」
「殿下、あまりあの者にご興味持たれませんよう」
「どういう意味だ?」
「あの者は伯爵家のご令息ではありますが、2年ほど前に養子として迎えられた元スラム出身の者です」
『殿下には相応しくない』と侍従は言う。
「出生はどうであれ、ディラントも伯爵家の人間として認められた者だ。あまり不用意な発言は控えた方かいい」
そう言うと、侍従は頭を下げてきた。
興味を持つな?
それは無理な話だ。
もう僕はディラントに興味を持ってしまった。
ディラント・グロウ、噂では聞いていた。
グロウ伯爵家の養子。
グロウ伯爵が自慢するだけ自慢して、なかなか会わせてくれないと父上がぼやいていたのを覚えてる。
僕はホールの出入り口に視線を向けた。
……また、会えるだろうか。
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