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第47話 ∥

(シリウスside) 馬車が停車してる場所に着くと、従者が馬車の扉を開ける。 馬車の中に不安気な表情のディーとシャーネが乗っていた。 「……あの、父様」 ディーが今にも泣きそうな顔で見てきた。 「大丈夫、話は聞いているよ」 そう言いながら、私は馬車に乗って二人の向かいに座った。 「陛下はリオネス殿下に非があるとして、今回の事は不問にすると仰ってくださった」 「………本当、ですか?」 そう言うディーに頷くと、ディーはホッと息を吐いた。 「それで、一体何があったんだい?」 そう聞くと、ディーとシャーネが顔を見合わせた。 ディーとシャーネは事の顛末をお互いに捕捉しながら話してくれた。 二人の話を聞いて、私はため息をついた。 「話は分かったよ」 陛下の話と一致している。 陛下の言う通りディーには非は無いようだ。 「……ところで、シャーネは一体何をしていたんだい?」 ディーの話の中で、シャーネに置き去りにされたというのが気になった。 「シャーネには、ディーのフォローを頼んだ筈たが?」 「その延長線上ですわ」 そう言ってシャーネはニッコリ笑う。 「どういう事だい?」 「ディーは自分の事を知らなさ過ぎですわ。だから皆にどう見られているか知って貰おうと思ったのです」 シャーネの言葉を聞いて、私も少し納得してしまった。 「……シャーネ、それは俺が令嬢たちに囲まれた事と何かに関係あるんですか?」 ディーがそうシャーネに聞く。 「何を言ってますの!?あの令嬢たちは、皆ディーに好意を持って近付いて来たのですよ!?」 ディーにシャーネが反論して、二人の言い合いが始まってしまった。 言い合いといっても、ディーはその意図を全く理解していないようだが…… ディーの言動にはたまに不思議な所がある。 はっきり『これ』とは言えないが、何というか自分を自分だと認識していないような。 前にメイドがディーの瞳を褒めたら、ディーは『そうですね、この瞳はキレイだと俺も思います』と返していた。 端から見たら自画自賛しているようにも思えるが、ディーの場合は客観的に見てるように思えた。 何故そういう風になったのかは分からない。 ディーにはまだ何か、私たちの知らないことがあるのかもしれない。

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