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第51話 ∥

(アルフレッドside) 「どう思う?」 「ディラント様の事ですか?」 「そうだ」 ラウスは考える素振りをする。 「とても9歳とは思えないですね。所作、会話、どれを取っても年齢に合わない。それに考え方もです」 ラウスはそう言う。 ディラントは私の表情を見つつ、己の考えを話してくれた。 しっかりと言葉を選び、解りやすい表現で話す。 あれは目上の人と話なれている会話の仕方だ。 それに人の感情を読み取る技量に、身分の高いものに対して、間違いを指摘出来る度胸もある。 「………欲しいな」 そう呟くと、ラウスがため息をついた。 「止めてください。相手はまだ子供です」 『年齢が違いすぎます』とラウスが言う。 「アホか、そういう意味じゃない。あれは将来、人の上に立つ人間だ。今のうちに手懐けたい」 「そういう事でしたか」 そんな会話をしていると、部屋の外が騒がしくなる。 バタバタと足音らしき音が近付い来たかと思ったら、勢いよく扉が開かれた。 「父上!」 そう叫びながらリオネスが入ってきた。 「リオネス…」 我が息子の行動に、頭を抱えた。 「ディラント・グロウが来たというのは本当ですか!?」 『何処に居ますか!?』と周りを見回す。 「ディラントなら既に退室している」 そう答えると、リオネスは明らかに落胆した。 「……そうですか」 「ディラントに興味があるのか?」 「……興味と言うか、もう一度ちゃんと話をしてみたいのです」 リオネスはそう言って、少し顔を赤らめる。 ……ほう、これは。 「しかし、今のリオネスではディラントには釣り合わないな」 そう言うと、リオネスがムッとした表情を見せる。 「……それはディラントがスラム出身だからという意味ですか?」 「違う、逆だ」 「……逆?」 「今のままではリオネスが、ディラントに釣り合わない」 「……僕が?」 「ディラントは将来、確実に上に立つ人間になる。今のままではリオネスはディラントに負けるぞ?」 そう言うと、リオネスの顔付きが変わった。 「…失礼します」 そう言ってリオネスは部屋を出ていった。 「……たきつけましたね?」 リオネスが部屋を出ていった途端、ラウスがそう言う。 「何の事かな」 そう言うと、ラウスは呆れたようにため息をついた。 本人はまだ気付いていないが、リオネスはディラントに特別な想いを寄せている。 それが友情なのか、それもと…… でもこれで、リオネスは大きく成長するだろう。 そう思って、私はリオネスが出ていった扉に視線を向けた。

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