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第52話 ∥
「………大丈夫だったんでしょうか?」
王宮からの帰り、馬車の中で伯爵様にそう聞く。
まさかあんな形で国王様に会うとは思わなかった。
国王様はちゃんと俺の話を聞いてくれたけど、下手すれば不敬罪になってもおかしくない内容だったと思う。
「大丈夫、心配ないよ」
そう言って伯爵様が俺の頭を撫でる。
「流石に陛下の謝罪を断ったときは驚いたけど、断った理由もしっかりしているし大丈夫だよ。陛下は寛大な方だからね、あの程度の事では動じない。でも、公式の場では駄目だよ」
そう言われて、俺は頷いた。
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(シリウスside)
恐らく陛下はディーの対応については気にしていないだろう。
むしろ、ディーに興味を持ったに違いない。
今回ディーの話を聞いて、とても9歳の考えとは思えなかった。
話の流れ、構成、どれを取ってもそれが正しいと思わせるような会話術。
それは長年高度な教育を受けた者のようだった。
ディーが邸に来てから約2年。
邸の中もかなり変わってきていた。
それは所々でディーが助言しているからだという知らせを受けている。
やはりディーは他の子供たちとは違う。
陛下もそれに気付いただろう。
恐らく、陛下はディーを取り込もうとするだろう。
陛下でなくても、私でもディーに期待してしまう。
そう思わせるような何かをディーは持っている。
でもディーはその事に全く自覚がない。
下手をすると良いように利用されてしまう。
ディーが自覚するまでは、私たちがしっかりと見ておく必要があるな。
「そういえば、今度シャーネと街に行く予定だったね」
「はい、約束したので」
「なら覚悟しておいた方がいい」
「覚悟?」
ディーは首を傾げる。
「女性の買い物に付き合うのは大変だよ」
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