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第52話 ∥

「………大丈夫だったんでしょうか?」 王宮からの帰り、馬車の中で伯爵様にそう聞く。 まさかあんな形で国王様に会うとは思わなかった。 国王様はちゃんと俺の話を聞いてくれたけど、下手すれば不敬罪になってもおかしくない内容だったと思う。 「大丈夫、心配ないよ」 そう言って伯爵様が俺の頭を撫でる。 「流石に陛下の謝罪を断ったときは驚いたけど、断った理由もしっかりしているし大丈夫だよ。陛下は寛大な方だからね、あの程度の事では動じない。でも、公式の場では駄目だよ」 そう言われて、俺は頷いた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (シリウスside) 恐らく陛下はディーの対応については気にしていないだろう。 むしろ、ディーに興味を持ったに違いない。 今回ディーの話を聞いて、とても9歳の考えとは思えなかった。 話の流れ、構成、どれを取ってもそれが正しいと思わせるような会話術。 それは長年高度な教育を受けた者のようだった。 ディーが邸に来てから約2年。 邸の中もかなり変わってきていた。 それは所々でディーが助言しているからだという知らせを受けている。 やはりディーは他の子供たちとは違う。 陛下もそれに気付いただろう。 恐らく、陛下はディーを取り込もうとするだろう。 陛下でなくても、私でもディーに期待してしまう。 そう思わせるような何かをディーは持っている。 でもディーはその事に全く自覚がない。 下手をすると良いように利用されてしまう。 ディーが自覚するまでは、私たちがしっかりと見ておく必要があるな。 「そういえば、今度シャーネと街に行く予定だったね」 「はい、約束したので」 「なら覚悟しておいた方がいい」 「覚悟?」 ディーは首を傾げる。 「女性の買い物に付き合うのは大変だよ」

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