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第53話 アラン・リード
登城から数日後、俺とシャロウネは約束通り街に来ていた。
邸から街の近くまでは馬車で移動して、そこからは歩いて移動することになった。
本来なら馬車で目的の店まで行くところを、シャロウネが色々見て回りたいという事で徒歩での移動になった。
「ディラント様、シャロウネお嬢様、くれぐれも離れないようにしてくださいね」
付き添いのリーナさんに念を押される。
「分かってます」
馬車の中でも散々言われてたから、シャロウネも少し嫌気が差してるみたいだ。
「ディラント様、くれぐれもシャロウネお嬢様の事をお願いしますね」
リーナさんにそう言われて、俺は頷いた。
「なんでディーに言うんですか!?私の方がお姉さんですよ!」
そう言って起こり出すシャロウネに苦笑が漏れた。
「シャーネ、一緒に居れば大丈夫ですよ」
そう言うと、シャロウネがニッコリと笑う。
「そうですわね。私がディーから離れなければ良いのですよね」
そう言ってシャロウネが俺の腕にしがみついてきた。
「こうすれば、ディーから離れることはありませんわ」
シャロウネは嬉しそうに笑った。
……有華ともこうしてよく一緒に歩いたな。
俺は前を思い出して、懐かしく感じた。
俺はシャロウネと一緒に服屋に入る。
ここは貴族御用達の店で、当然オーダーメイド。
「ディー、どれが似合うと思いますか?」
そう言ってシャロウネがテーブルの上に大量のデザイン画を並べる。
正直、女性の服は分からない。
ましてやドレスなんて論外だ。
「シャーネはどういったデザインが好みなんですか?」
そう聞くと、シャロウネが悩み出す。
「こういったデザインは結構好きですわ」
そう言ってシャロウネは数枚のデザイン画を手に取る。
それは派手目のデザインに濃いめの色使いのドレス。
……そういえば、ゲームでのシャロウネはこんなドレスを着ていたな。
俺はゲームでのシャロウネのスチルを思い出す。
ドレスのせいもあってか、キツいイメージだった。
でも何となく、今のシャロウネのイメージとは違うと思った。
「こういったデザインも似合うと思いますよ」
そう言って俺は目についたデザイン画をシャロウネに渡した。
俺が選らんたのはフワッとしたデザインで淡いブルーに一部だけ濃い色が使われてるドレス。
シャロウネは俺が選んだデザイン画を見て黙ってしまった。
………気に入らなかったかな。
そう思って俺は別のデザインを探そうとした。
その時、シャロウネが突然立ち上がる。
「これ、試着出来ますか?」
そう店員に声を掛ける。
店員は『少々お待ちください』と言って部屋を出ていった。
「ディー、私このデザイン気に入りました」
そう言ってシャロウネは今日一の笑顔を見せる。
「気に入って貰えたなら良かったです」
しばらくすると店員の人が戻ってきて、その手にはさっきのデザインのドレスが持たれていた。
オーダーメイドの店でも試着が出来るように、デザイン画の試作品が存在する。
ここから生地だったり、色だったりと細かい修正を加えて新たにドレスが作られる。
シャロウネはそのドレスを確認すると、隣の試着室に入っていった。
シャロウネが試着室に入ると、俺は大きくため息をついた。
「お嬢様があれほど気に入るのは珍しいです」
そうリーナさんが言う。
「そうなんですね」
「きっとディラント様がお選びになったからですね」
そう言って笑うリーナさんに、俺は首を傾げた。
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