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第54話 ∥
しばらくすると、シャロウネがさっきのデザイン画のドレスを纏って試着室から出てきた。
「如何ですか?」
「よく似合ってますよ」
そう言うと、シャロウネはフワッと笑った。
その後もシャロウネの試着は続いた。
俺が選んだドレス以外に全部で7着。
もうかれこれ3時間くらいこの店に居る。
シャロウネは試着する度に、俺に感想を求めてくる。
正直『似合ってる』以外の言葉が出てこない。
3着目辺りから『似合ってる』と言うと、シャロウネがむすっとし始めた。
原因は分かってる、俺の語彙力の無さだ。
でも『似合ってる』って言葉以外何がある?あったら教えてほしい。
ようやく試着が終わって、購入するドレスの注文をする。
それが終わると、俺たちは昼食を摂るために軽食が出るカフェに向かった。
シャロウネがレストランじゃなくカフェを選んだのは俺のため。
俺がまだあまり量を食べられないからと、カフェを選んでくれた。
っていうのをリーナさんが教えてくれた。
カフェに着いて中に入ろうとした時、人混みの中に見知った顔を見かけた気がした。
……アラン?
「ディー、どうしたのですか?」
アランらしき人に気を取られてると、シャロウネに呼ばれる。
「いえ、何でも無いです」
シャロウネにそう返すと、俺はもう一度アランらしき人が居た方を見た。
でも既にその人の姿は無かった。
……気のせいかな。
アランがこんなところに居る筈がないよね。
そう思って、俺は店内で待ってるシャロウネたちに駆け寄った。
夕方になって、俺たちは邸に帰って来た。
俺は部屋に戻ると、早々にベッドに倒れ込んだ。
………疲れた。
そう思って、俺は大きくため息をつく。
伯爵様が言っていた『女性の買い物に付き合うのは大変』の意味が分かった。
確かにこれは大変だ。
昼食を摂った後、もう一店服屋に行って、その後ジュエリーショップ、他にも数店の店を回った。
……女の人って、どうしてこんなに買い物が長いんだろう。
そう思って、俺はまたため息をついた。
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