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第61話 ∥

伯爵様に『アランの事はどこまで知っている?』と聞かれた。 本当はゲームの知識で最初から知っていた。 でもそんな事を伯爵様には言えない。 だから最初は本当の事を、知った経緯を嘘吐いた。 たまたま気付いたなんて、かなり苦しいかもしれないけど、今はそれ以外の方法が思い付かなかった。 俺は伯爵様をチラッと見る。 伯爵様は額に手を当てて何か思い詰めていた。 やっぱり無理があったかな。 そう思っていると、伯爵様が俺を見る。 「ディー、アランの事はこの邸でも一部の者しか知らない。アランの事は内密に頼めるか?」 そう言われて、俺は頷いた。 「父様、お願いがあるんですが……」 「何だい?」 「俺もアランさんを手伝うことは出来ませんか?」 そう言うと、伯爵様は驚いた表情をする。 「何を言い出すんだ、アランを手伝うのは危険だと分かって言っているのか?」 「もちろんです」 アランさんを見たら分かる。 でも…… 「その危険な仕事をアランさん一人にさせる訳にはいきません」 伯爵様が困った顔をする。 我が儘を言ってるのは分かってる。 伯爵様を困らせてるのも分かってる。 「アランは諜報員になることを了承している。ディーとは立場が違うんだよ」 この世界は身分社会、身分の高い者が優遇される。 俺は伯爵様の養子になったから、身分は『伯爵令息』。 アランは執事だから、身分は『平民』。 でも元を辿れば、俺もアランも一緒。 「………俺も、元はスラム出身です。アランさんと何も変わらない。それに、俺はアランさんも家族だと思ってる」 俺は伯爵様の顔を見る。 「家族が傷付いてるのに、放って置くなんて俺には出来ない」 9歳の子供が諜報活動の手伝いなんてやっぱり無理だろうか。 そう思って伯爵様を見てると、伯爵様がため息をついた。 「……分かった。アランの手伝いを認めよう」 伯爵様がそう言った。

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