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第63話 ∥
伯爵様から渡されたのは、今までアランが調べた事が書かれた資料。
ここ最近で起きた事件の事が書かれていた。
その内容は一つの窃盗団が全ての事件に関わっている事。
その窃盗団の名前は『クラーク団』
リーダーの名前が『テオ』という事。
『クラーク団』は聞き覚えがあった。
ゲームでアランが追っていた窃盗団がそんな名前だった。
これで確信した。
やっぱりこれはアランルートのイベント。
でもどうして今?アランルートのイベントはもっと先の筈。
でも今はそんな事はどうでも良い。
この事件を解決しなきゃ、またアランが傷付く。
『クラーク団』
窃盗、傷害、誘拐、色々な悪事を働く集団。
ここ最近、動きが活発になって見かねた国王様が伯爵様に打診したらしい。
国王様の打診を受けた伯爵様がアランにクラーク団の事を調べるように命じた。
クラーク団のリーダーはかなり頭が切れるみたいで、アランが調べても事件に関わっているのがクラーク団って事くらいしか分からなかったらしい。
それにリーダーの名前も『テオ』じゃなくて、たしか『ラジール』だった気がする。
もしかしたら偽の情報を掴まされたのかもしれない。
俺ならゲームの情報でクラーク団のアジトの場所も分かるけど……
アランですら分からなかった情報を俺が話すわけにはいかない。
俺の役目はどうそこまで違和感なく誘導するかになるけど、どうしたら良いかな。
「その資料から何か分かるかい?」
伯爵様に渡された資料を眺めていると、伯爵様がそう聞いてくる。
「……いえ、特には」
そう答えると、伯爵様が『そうか』と言って少し肩を落とす。
……これは何か期待されてた?
「……取り敢えず、アランさんとは違う線で聴き込みをしたいと思います」
「違う線?」
「はい。この資料を見た感じ、アランさんは多分裏の人間に聴き込みをしていたと思います」
あの時アランが裏路地に入っていったのも、そういう人たちが集まる場所で情報収集するつもりだったと思う。
「でもこういう事に詳しいのはそういう人間じゃないのかい?」
伯爵様が首を傾げながらそう言う。
「確かにそうですね。でもそういう人たちは正確な情報はくれません。こういう人たちは報復を恐れますから」
「報復か……ならディーはどういう風に聴き込みをするつもりだい?」
そういう伯爵様に、俺は笑って見せた。
「周辺の店の店員にそれとなく聴くんですよ」
「店員に?」
「店の店員は不特定多数の人と毎日のように会話を交わします。俺が聴き取るのは噂話です」
店の店員は情報通の人が多い。
「でも噂は所詮噂だろう?」
「そうですね。でも時に噂は、有力な情報原になるんですよ」
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