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第66話 ∥
部屋の中に入ってベッドに近付く。
ベッドにはアランが寝ていた。
「……アランさん」
目が閉じられていたから寝てしまったかなと思ったけど、一応声を掛けてみた。
俺が呼び掛けると、アランの目がうっすらと開いた。
「アランさん」
もう一度呼び掛けると、アランの瞳が俺を捉える。
「………ディラント、さま?」
ぽやんとしていたアランが俺を見た途端、起き上がろうとした。
「…っ!」
突然動いて傷が痛んだのか、アランが苦痛の表情を見せる。
「まだ動いたら駄目です!」
そう言って俺は起き上がろうとするアランを押さえ付けた。
でもディラントの体じゃ押さえ付けたところであまり意味はない。
それでもアランは素直に従ってくれた。
「まだ絶対安静です。動かないで下さい」
「………すいません」
そう言ってしょんぼりするアランに、俺は息を吐いた。
「アランさんが目を覚ましたと聞いて、顔を見に来ただけなので。今はゆっくり休んで下さい」
そう言って笑いかけると、アランが小さく頷いた。
本当は俺もクラーク団の捜査に加わると言うつもりだった。
でもアランを見て、言わない方が良いんじゃないかと思った。
今アランに言えば、アランは確実に俺を止める。
俺が情報収集の為に街に行こうとすれば、アランも絶対着いてくると言う。
そうなればいつまで経ってもアランの怪我が良くならない。
今は怪我の治療に専念してもらう方が良い。
そんな事を考えていると、アランがうとうとし始める。
無理もない。気付いたばかりで体力も戻ってない。
でもアランはその睡魔に抗ってるように見えた。
「アランさん、寝てください」
そう言って離れようとすると、服の袖が引っ張られた。
見るとアランが俺の服の袖を掴んでいた。
アランのブルーグレイの瞳が揺れる。
アランはまだ15歳。
大人びているけど、"俺"からしてみたらまだ子供。
こんな怪我を負って、広い部屋に一人は心細いに決まってる。
「大丈夫、ここに居ますよ」
そう言ってアランの頭に手を置いた。
そうすると、アランはホッとしたように目を閉じた。
しばらくすると、アランから寝息が聞こえてくる。
俺はアランが眠った事を確認すると、そっとその場を離れた。
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