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第70話 ∥

有無を言わさず、リーナさんに食堂まで連行される。 食堂に入ると伯爵様が居た。 「おはようディー」 俺に気付いた伯爵様がそう言って笑う。 「父様、おはようございます。昨日はご報告出来なくて申し訳ありません」 「いや、それは良い。ディーはゆっくり休めたかな」 伯爵様にそう言われて、床で寝てしまったことを思い出して顔が熱くなった。 そんな俺を見て、後ろでリーナさんがクスクスと笑っている。 「……リーナさん、笑わないで下さい」 「申し訳ありません」 リーナさんはそう良いながらも、ずっと笑っていた。 伯爵様が報告は後で良いと言ってくれたので、俺は取り敢えず朝食を食べることにした。 「……そういえば、シャーネはどうしたんですか?」 俺は朝食にシャロウネが居ないことに気付いて、伯爵様に聞いてみた。 「シャーネはお茶会に招待されて、その準備の最中だよ」 「そうですか」 社交界デビューしたシャロウネは、よくお茶会や晩餐会に招待されるようになった。 それに伴って、俺への招待状も届くようになった。 シャロウネには一緒に行こうと言われるけど、何かしら理由を付けて断っている。 「ディーは行かないのかい?」 そう言って伯爵様がニヤリと笑う。 ………これは知ってて聞いてきてるな。 「今はそれどころじゃないので」 「ディーの場合は息抜きも必要だよ」 そう言う伯爵様に、後ろでリーナさんが頷く。 今俺がやっている事は、俺自身が好きでしている事だからそんな苦にはならない。 寧ろお茶会とかに行った方がストレス溜まりそうだ。 「そんなに嫌なんだね」 そう言って伯爵様がクスクスと笑う。 どうやら顔に出てたみたいだ。 そう思って、俺は頬をぐにぐにと揉んだ。 「…人が集まる場所はどうも苦手なんです」 「そうか。でも出席しなければいけないパーティーもあるから、少しずつ慣れていかなければいけないよ」 伯爵様にそう言われて、俺は渋々頷いた。 朝食を食べ終えた後、俺たちはお茶会に向かうシャロウネを見送った。 その後伯爵様の執務室でアルマさんも交えて昨日の事を報告した。

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