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第72話 ∥
俺はアルマさんの手を抜けると、男たちに近付いた。
「いけません、ディラント様!」
アルマさんに腕を掴まれる。
その瞬間、男の一人がアルマさんを蹴り飛ばした。
「アルマさん!?」
倒れるアルマさんに駆け寄る。
様子をみると、アルマさんは気を失っていた。
「アルマさん、アルマさんしっかりしてください!」
俺は気を失ってるアルマさんの体を揺する。
でもアルマさんが気付く気配はない。
こんなつもりじゃ無かった。
アルマさんを傷付けるつもりなんて無かった。
そんな事を考えていると、突然後頭部に衝撃が走った。
視界がボヤけて意識が薄れていく。
俺の記憶はここで途絶えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(アルマside)
ふと目を開けると、私は裏路地で倒れていた。
腹部に痛みが走って、その原因を考える。
痛みの原因を考えていて、私はあることを思い出した。
「……ディラント様?」
私はディラント様の姿を探して辺りを見回す。
「ディラント様、何処ですか!?」
そう叫んでもディラント様の姿は見つからなかった。
まさかさっきの連中に連れ去られた?
私はグッと唇を噛むと、急いで馬車に向かった。
待機させていた馬車に着くと、御者が私の慌てように驚く。
「アルマ様!?そんなに慌ててどうされたのですか!?」
「ディラント様が連れ去られた!急いで邸まで!」
そう言うと、御者も事態を察して急いで馬車を走らせた。
あの時ディラント様は自らあの連中の元に行こうとしていた。
恐らく、あれは私を守ろうとしての行動。
……あんな子供に守られるなんて、なんて不甲斐ない。
待っていてください、ディラント様。
必ずお助け致します。それまでは、どうかご無事で。
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