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第75話 ∥
俺は『リーダー』と呼ばれてるこの人を知ってる気がした。
浅黒い肌に赤褐色の髪、青い瞳。
他の人に比べて、この人だけ雰囲気が違う。
歳は二十歳くらいかな、ワイルド系のイケメンだ。この人が『ラジール』
俺がじっと見ていると、ラジールが近付いてきた。
ラジールは俺の目の前にしゃがんだかと思ったら、顎を持たれて無理矢理上を向かされた。
「お前が俺たちを探ってるっていう貴族のガキか?」
そう言ってラジールが俺を見下ろす。
手足が縛られてて体が支えられなくて地味に痛い。
それに顎を押さえられてるから話すことも出来ない。
「何だ、ビビって何も言えないか?」
『所詮貴族のお坊っちゃまだな』と言ってラジールが少しバカにしたように笑う。
それにはさすがにカチンと来た。
俺は首を降って顎を押さえてるラジールの手を振り払った。
ラジールの手を振り払った事で支えを失った俺は、バランスを崩して勢い良く額をぶつけた。
床は木で絨毯なんて敷いてないから、痛みで悶える。
「っ!?何して…?」
俺の行動に驚いたのか、ラジールが狼狽える。
「……顎を押さえられたら、喋りたくても…喋れない」
痛みに耐えながらそう言う。
「出来れば、手足を縛っている紐もほどいて貰えると助かる」
そう言って俺はラジールをじっと見た。
ラジールが何か考えているのが分かる。
しばらく考えた後、ラジールは手下に指示を出して俺を縛っている紐をほどいてくれた。
……少し痕が着いてる。
そう思いながら、俺は手首を擦る。
俺が子供の姿だからほどいてくれたんだよな。
多分元の、"俺"の姿ならほどいてくれなかったと思う。
「ありがとうございます。これでちゃんと話が出来ますね」
そう言って俺はラジールに笑みを向けた。
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