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第77話 ∥
(ラジールside)
数日前から俺たちの事を嗅ぎ回ってる貴族が居ると情報が入った。
その貴族は大人の方は上手く隠してるみたいだったが、ガキの方は貴族丸出しらしい。
ガキ連れなら怪しまれないとでも思ったんだろう。
そんなもので俺たちを誤魔化せると思うなんて、貴族っていうのは本当に馬鹿な連中だ。
手下の話では、そのガキ連れの貴族は定期的に街に現れるらしい。
店を回っては、店員に事件の話を聞いて回ってるみたいだ。
数日後、手下が貴族のガキを連れてきたと連絡がきた。
俺はそのガキを俺の前に連れてくるように指示した。
しばらくすると、噂のガキが手下に担がれて運ばれてきた。
目の前に転がされて、一瞬苦悶の表情を見せる。
俺が声を掛けて目が合うと、そのガキは驚いた表情を見せた。
なんだと思っていると、次の瞬間には驚きの表情は消えて、今度は突き刺すような視線を向けてきた。
透き通るアイスグリーンの瞳。
話には聞いていたが、これほど綺麗なガキだとは思わなかった。
俺はそいつに近付くと、顎を持って強制的に向かせた。
怯えるかと思ったら、俺から視線を外さない。
それどころか更に視線が鋭くなる。
「お前が俺たちを探ってるっていう貴族のガキか?」
そう聞いても何も答えない。
「なんだ、ビビってるのか?」
そう聞くとそいつはキッと睨んできて、突然首を振り始めた。
突然の事で反応出来なかった。
ガキの顎が手から外れて、ガキは勢い良く額を床にぶつけていた。
正直、驚いたし焦った。
まさか自分から手を払いにくるとは思わなかった。
俺の知ってる貴族のガキは、少し脅せば泣くだけで何も出来ない奴ばかりだ。
でもこいつは違う。
怖がることも喚くこともなく、俺と対峙しようとしている。
今も痛みに悶えながらも、その姿勢を変えず俺に鋭い視線を向ける。
こんな奴始めてだ。
俺はこのガキが面白いと思った。
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