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第78話 ∥
(ラジールside)
貴族のガキが手足の拘束を取って欲しいと頼んできた。
手足を縛っていたのは念のため。
こんなガキ、別に縛ってなくてもどうとでも出来る。
そう思って、俺はガキの手足を縛っている紐をほどくように指示した。
紐をほどくと、そいつは手首を擦りながら立ち上がる。
「じゃあ話して貰おうか。何が目的で俺たちを探ってた?」
そう聞くと、そいつはまた鋭い視線を向けてくる。
「治安維持の為」
ガキがそう言う。
でも明らかに嘘だと感じた。
「俺がそれを信じるとでも?」
そう言うと、そいつがフッと笑った。
「やっぱり無理がありますね」
そう言ってガキが笑う。
……何なんだ、このガキは。
何でこんな状況で笑ってるんだ?
「俺の本当の目的は、あなたたちに悪い事を止めてもらうことです」
「どうやって止める?俺たちを捕まえるのか?」
「いや、捕まるかどうかはあなた次第かと。全てを止めろとは言わないんですけど、人を傷付けるのは止めて頂きたいんですよ」
そう言って俺をじっと見据える。
その瞳にな怯えは一切ない。あるのは決意だけだ。
……本当に何なんだ、こいつは。
「あなたの仲間に俺の大切な人たちが傷つけられました。俺はそれが許せないだけなんです。あなただって仲間が傷付くのは嫌でしょう?」
こいつは本当に子供なのか?
「ねぇ、"ラジール"さん?」
そう言ってガキが不適な笑みを浮かべる。
その瞬間、ゾワッと体に悪寒が走った。
俺は今まで本名を名乗って来なかった。
ずっと『テオ』という偽名で通していた。
こいつらだって俺の本当の名前を知らない。
なのに何でこのガキは俺の本当の名前を知っているんだ?
得体が知れない。
こいつは危険だと本能が言ってる。
こいつはこのままにしておく訳にはいかない。
そう思って、俺は周りに控えてる手下に目で指示を送った。
手下の一人が俺の指示を読み取ってガキに襲いかかった
こんなガキ一人、どうとでもなる。
少し痛い目見れば大人しくなる、そう思っていた。
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