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第80話 ∥
(ラジールside)
何が起きたのか分からなかった。
こんなガキ一人、どうとでもなると思っていた。
でも今、床に転がってるのはガキではなく俺の手下だった。
……何が起きたんだ?
俺の指示で手下の一人がガキに殴り掛かると、ガキが手を大きくぐるっと回した。
ただそれだけ。
ただそれだけで殴り掛かった手下がひっくり返った。
ガキはその隙に手下の溝尾に拳を打ち込む。
手下はその瞬間、うめき声を上げて動かなくなった。
ガキが息を深く吐いて立ち上がる。
俺は倒れてる手下をチラッと見た。
……これはこのガキがやったのか?
目の前で起きた事が信じられなかった。
6、7歳くらいのガキが、自分の数倍はある体格の大人を投げ飛ばすなんて誰が信じられる。
そう思っていると、ガキが俺を見る。
その瞳に、思わず体が揺れた。
手下からもざわざわとどよめきが起きる。
俺は手下たちにもう一度指示を飛ばした。
手下たちは少し戸惑いながらもガキに襲い掛かった。
今度は一人じゃなく数人。
さすがにこの人数じゃ相手にならないだろう。
ガキには可哀想だが、今ここで潰しておかないと後々面倒な事になる気がする。
不穏の種は早めに刈り取った方が良い、そう思った。
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