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第81話 ∥

一人倒すと、ラジールが指示したのか数人がまた襲い掛かってきた。 見たところ全員10代か。 動きが全くの素人だな。喧嘩慣れはしてるみたいだけど、動きがぎこちない。 独学ならこんなものか。 俺は向かってくる相手をいなしながら観察をしていた。 襲い掛かってくる相手を2~3人投げると、相手の攻撃が弱まる。 相手もまさかこんな小さい子供が大人を投げ飛ばすなんて思ってもみなかったんだろう。 俺が使っているのは合気道。 相手の力を使って相手を倒す。 相手の力を借りるから、力の弱い子供でも倒せる。 俺の場合は色んな武術の形が混ざってしまっているから少し違う部分はあるけど。 攻撃の手が止んで、俺は相手を見る。 数人が固まってこそこそと話していた。 『何なんだ、このガキ』 『話が違うじゃないか』 『お前が行けよ!』 耳を傾けていると、そんな会話が聞こえてきた。 数人投げ飛ばした事で戦意を失ったみたいだ。 俺は小さく息を吐いた。 「まだやりますか?」 男たちにそう聞くと、男たちは狼狽え始めた。 俺は今度はラジールを見る。 「もう止めませんか?俺だってあなたたちを傷付けたいわけじゃないんです」 そう言うと、ラジールの顔が少し歪む。 どうやら、まだ悩んでいるみたいだ。 「俺はあなたたちを捕まえる気はありません。ただ人を傷付ける事を止めてもらえれば良いんです」 そう言っても、ラジールは悩んでいた。 ……別に悩むことではないと思うんだけど。 人を傷付ける事を止めるのに、何をそんなに躊躇しているんだろう。 それとも止められない理由があるのか? そんな事を考えながら俺は窓の外をチラッと見た。 俺がここに連れてこられてかなり時間が経ってる。 恐らく、俺がアルマさんに頼んだ伝言はアランに伝わってると思う。 アランもあの伝言の意味に気付くのにそんなに時間は掛からない筈だ。 もうそんなに時間はない。 ……もう悠長な事は言ってられないな。 そう思って、俺は大きくため息をついた。

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