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第87話 ∥

熱を出した俺は、あれから3日寝込んだ。 漸く熱が下がって動けるようになったけど、大事を取って休めと皆に言われて、俺はいまだにベッドの中に居た。 後から俺が誘拐されたことを知ったシャロウネとリーナさんに泣かれて、罪悪感から従うしかなかった。 俺は暇潰しに読んでいた本を閉じてため息をついた。 ディラントの体は弱すぎる。 少し動いただけで疲れるし、思うように動けない。 まぁ、9歳の体と25歳の体を比べたら駄目なんだろうけど…… あまり食べられない事も原因だろうけど、ディラントは元々体が弱いのかもしれない。 今回倒れたのは、始めての大立回りと精神的なものだったけど、これからは注意する必要があるかな。 大事を取って休むこと2日、先生から全快と言われて、俺は漸くベッドから出ることを許された。 さすがにあれから5日も動けないとは思わなかった。 まぁそれは良いとして、俺は今、これまでにないほど緊張していた。 俺は伯爵様の執務室のソファで向かいには伯爵様とアルマさん、隣にアランという形で座っていた。 「じゃあ、きちんと説明してもらうよ」 そう言って伯爵様が笑う。 その笑顔が逆に怖かった。 伯爵様がそう言った事でアルマさんとアランの視線が俺に向く。 俺は意を決して誘拐事件の真相を話した。 誘拐されることは元々計画していたこと。 誘拐されたのはわざとだったこと。 ラジールと話した内容を包み隠さず話した。 話すに連れて、皆の顔がどんどん険しくなる。 怒られる事は覚悟していたし、回避は出来ないことは分かっていたけど、ここまで凄まれるとちょっと怖くなってくる。 俺の話を聞き終えてため息をついた伯爵様に、俺は思わず体が揺れた。 「……ディラント。ディラントには事件を解決してくれたこと感謝している。でも、それはディラント自身を危険に晒してまですることではない」 そう言って伯爵様が俺をじっと見る。 普段『ディー』と呼ぶ伯爵様が『ディラント』と呼ぶ。 「今回は無事だったから良かったものの、もし怪我したらどうするつもりだったんだい?それこそ死んでしまったら………」 伯爵様はそこまで言ってグッと唇を噛む。 ……あぁ、これは俺が間違ってた。 上手くいく自信はあった。だから考えもしなかった。 俺の浅はかな行動で伯爵様に……父様にこんなにも心配を掛けてしまった。 「………すいませんでした」 そう言って俺は伯爵様に頭を下げた。 そうすると、ポンと頭に手を置かれた。 「もうこんな事はしないと約束してくれるね?」 そう言って伯爵様は優しく俺の頭を撫でる。 「……はい」 俺は伯爵様の言葉に素直に頷いた。

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