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第94話 ∥

騎士の人が出ていって、ラジールと二人になる。 俺はベッドに横たわってるラジールの顔を覗き込んだ。 あれからラジールがどうなったのかは分からない。 ラジールルートはどうだったかな。 そう考えてみるけどラジールルートは思い出せなかった。 ヒロインがクラーク団に誘拐されてラジールと出会って恋に落ちて……だけで終わる筈がない。 『イノラバ』にはどのルートにも必ずセカンドストーリーがあった。 ラジールだけ無いなんて考えられない。 そんな事を考えていると、騎士が伯爵様を連れて戻ってきた。 「ディー、騎士から聞いたよ。彼が庭に倒れていたっていう……」 伯爵様は部屋に入るなりラジールに視線を向ける。 「はい、あのまま放っておく訳にはいかなかったので」 そう言いながら、俺は扉の前に居る騎士に視線を向けた。 それに気付いてか、伯爵様が騎士に部屋を出るように指示した。 騎士は伯爵様の指示に従って部屋を出ていった。 「ディー、話を聞かせて貰おうか」 そう言う伯爵様に、俺は頷いた。 「庭を散歩してる途中で仔猫を拾いました」 「……仔猫?」 「はい、仔猫です」 そう言って俺は抱えていた仔猫を伯爵様に見せた。 仔猫を見た伯爵様がきょとんとする。 「……うん?」 「仔猫を見つけた茂みの奥にラジールを見つけました」 「っ!?待ちなさい!今『ラジール』と言ったか!?」 「はい」 「では、彼がクラーク団の?」 「はい、ボスです」 そう言うと、伯爵様はまたラジールに視線を向けた。 「……まさかクラーク団のボスが我が家に迷い込むとは」 そう言って伯爵様はため息をつく。 「とりあえず彼は部屋を替えて気が付くまで待とう。その後尋問する」 伯爵様がしばらく考えた後そう言った。 「あの、俺にも彼と話をさせて貰えないですか?」 そう言うと、伯爵様がじっと見てくる。 その後ため息をついた。 「……分かった、ただし護衛としてアランをつける」 俺は伯爵様の言葉に頷いた。

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