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第96話 ∥
シャロウネと一緒に仔猫の名前を考えていると、伯爵様が部屋に来た。
「ずいぶんと楽しそうだね」
シャロウネとあーでもないこーでもないと話してる様子に、伯爵様が少し呆れていた。
「お父様!」
シャロウネが伯爵様に駆け寄る。
「ディーと仔猫の名前を考えていたのです」
「そうか、で?名前は決まったのかい?」
「はい!この子名前は『ルオ』です」
「ルオか、良い名前をつけたね」
そう言って伯爵様は微笑みながらシャロウネの頭を撫でた。
シャロウネも嬉しそうに笑っていた。
仔猫の名前は『ルオ』に決まった。
『ルオ』はこの世界で『白』という意味を持つ言葉だ。
『赤』という意味の『カレオ』とで迷ってシャロウネと話し合って『ルオ』に決まった。
「これからはルオも大切な家族だ、大事にしなければいけないよ」
そう言う伯爵様に俺とシャロウネは頷いた。
「じゃあディーを少し借りても良いかい?ディーに話があってね」
シャロウネに向けてそう言う伯爵様が俺に目配せをした。
俺はその目配せで察した。
「シャーネ、少し離れます。ルオをよろしくお願いします」
「分かりましたわ」
シャロウネが頷く。
「ルオ、大人しくね」
そう言ってルオを撫でると、ルオは返事をするように鳴いた。
その後リーナさんをチラッと見る。
リーナさんも事情を察して小さく頷いた。
俺は伯爵様と一緒に部屋を出た。
「ラジールが気がついたんですね」
部屋から十分離れたところで伯爵様に話を切り出した。
「……あれ?でも先に尋問をする筈では?」
伯爵様はラジールを尋問すると言っていた。
俺がラジールと話せるのはその後だったはず……
そう聞くと、伯爵様が大きくため息をついた。
「その彼がディーと話したいと言ってきてね」
「え?」
「ディーじゃないと話をしないと言って聞かないんだよ」
『だから先にディーを会わせる事にした』と伯爵様が言う。
それを聞いて、俺もため息をついた。
「分かりました、ラジールと話をしてみます」
「護衛はつけるけど、気を付けるようにね」
そう言う伯爵様に、俺は頷いた。
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