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第97話 ∥
ラジールが居る部屋は邸の一番奥。
部屋の前には騎士が二人立っていた。
「ご苦労」
伯爵様が扉の前に立つ騎士たちに声を掛ける。
見たことの無い人たちだな。
そう思いながら伯爵様の後ろから様子を見てると、騎士の一人と目が合った。
「初にお目に掛かります。私はフラル・ノジーク、騎士団の騎士団長を任されています」
そう言ってフラルさんが俺に向けて騎士の礼を取る。
「私は副団長を任されていますレオン・ラクターと申します」
そう言ってレオンさんも俺に向けて騎士の礼をした。
「ディラントです。よろしくお願いします」
そう言って俺も二人に礼を返した。
伯爵様の話によると、この二人は事情を知っている。
こういう時に護衛として動いて貰えるようにだそうだ。
「彼の様子は?」
「今は大人しくしています。ただやはり何も話さないみたいで」
「開けてくれるかい」
「お気を付けください」
そう言ってフラルさんが扉を開けた。
部屋の中にはアランとアルマさんも居た。
伯爵様が部屋に入ったことで、二人が頭を下げた。
この部屋は一時預りの人を泊める部屋。
解りやすく言えば厄介者を隔離する部屋だ。
その為に部屋の作りは他の部屋に比べてシンプルな作りになっている。
置いてある家具はソファにテーブル、ベッドだけという必要最低限の物だけ。
まぁ、"俺"からしてみたら十分豪華なんだけど。
俺は部屋の奥を覗いてみた。
ベッドにラジールが居て、その手には手枷が付けられていた。
ふとラジールと目が合った。
その瞬間、ラジールがパァと笑顔になった。
「ディラント!」
ベッドに座ってたラジールが満面の笑みで駆け寄ってくる。
その瞬間、アランとアルマさんが俺の前に立った。
どうやら俺を守ってくれてるみたいだ。
もう一度ラジールを見ると、手枷に付けられてる鎖でここまでは来れないみたいだった。
手枷が邪魔なのか、ラジールはガチャガチャと手を振っている。
俺はそんなラジールに近付いた。
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