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第99話 ∥
「私は反対です」
ラジールと話終えて伯爵様の執務室に入ると、アランがそう言う。
「……何故だい?」
伯爵様がそう言ってアランを見据える。
その様子を見て、俺もアルマさんも息を飲んだ。
「私はあいつが信用出来ません」
「私だって彼を信用している訳ではない。だからと言って、チャンスも与えずに突き放すのは違うと思っている」
そう言うと、伯爵様が俺をチラッと見た。
「切り捨てるのは簡単だ。でもああいう者たちを公正させるのも我々のやるべき事なんだよ。それにさっきも言った通り、もしディーや邸の者たちに少しでも危害を加えるようであれば、その時は私も容赦はしないよ」
伯爵様がそう言うと、アランは黙ってしまった。
でもその表情は納得したものじゃなかった。
俺はそんなアランに近付いた。
「アランさん、アランさんが納得出来ないのも分かります。多分、いくら言っても納得は出来ないでしょう。なら自分で確めてはどうですか?」
「自分で確める?……それってどういう?」
「ラジールがどういう人なのか、本当に危険は無いのか、この邸に置くに相応しい人なのか、それをアランさん自身の目で確めるんです。もしアランさんがラジールの事を認められなければ、ラジールには申し訳ないですが、この邸から出ていってもらいます。ですが、ほんの少しでもラジールの事を認めてくれたら、その時はチャンスを与えてあげてください」
「………ディラント様はあいつを認めているのですか?」
「いえ、認めてはないですよ。でもラジールが以前会った時とは明らかに違うって事は分かります。だから、俺も見極めるつもりですよ」
そう言うとアランは俯いてしまった。
到底、納得出来ないんだろう。
アランに取ってはクラーク団は敵対する存在だった。
そのボスであるラジールに敵意を向けてしまうのは仕方の無い事。
でももし、二人が解り合えればお互いに良い存在になると思う。
俺の見立てではアランとラジールは合うと思うんだけとな。
俺たちのやり取りを見ていた伯爵様が『ふむ』と頷く。
「では、アランがラジールの監視をしてはどうだい?」
「わ、私が?」
「もしアランが彼を認められなければ、アランの判断で追い出してもらって構わない」
そう言うと、伯爵様が俺を見た。
「それでどうだろう」
伯爵様がそう聞いてくる。
俺は伯爵様に向けて頷いた。
「俺はそれで構いません」
「待ってください!私がそんな大丈夫な事を決めるだなんて……」
そう言ってアランが狼狽える。
「アランさん、大丈夫です。俺も父様もアランさんの決定に文句は言いません。アランさんの思う通りにしてもらって良いですよ」
俺がそう言うと、アランもまだ思うところはあるものの『分かりました』と頷いた。
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